大阪市住吉区長居藤田鍼灸整骨院
仙腸関節障害:腰の痛み、臀部の痛み、そけい部の痛み、下肢の痛みなど
仙腸関節について
仙腸関節とは
仙腸関節は骨盤の骨である仙骨と腸骨により作られる関節です。
仙腸関節は強靭な骨間靭帯などにより結合され、それをさらに靭帯で補強することで非常に強く安定した関節となっています。
仙腸関節の神経支配は
仙腸関節は、前方は第4第5腰神経と第一仙骨神経前枝からの直接枝に支配されています。また、下方は上殿神経と第2仙骨神経枝の後枝、後方は第5腰神経と第1第2仙骨神経の後枝が支配しています。
そして仙腸関節では、関節包や関節後方の靭帯領域に神経の終末枝が分布するために痛みの発生源となる可能性があります。
仙腸関節の加齢的変化
仙腸関節は加齢に伴い退行性変化が起こります。
関節面には凹凸が生じ、関節軟骨は線維化が進み、関節包や滑膜は肥厚し線維性になります。
その仙腸関節の退行性変化は40~50から変化が目立つようになり、70歳になると関節内の線維性の癒着が増大し骨棘形成がすすむため可動域が減少します。
仙腸関節の安定性
仙腸関節は、脊柱にかかる負荷を下肢に伝達するために強固に安定しています。
仙骨は、アーチの要石のように二つの腸骨の間に骨性に組み合わさり挟み込まれているため、荷重が加わっても尾側に落ち込まないようになっています。
その強固な組み合わせで出来た関節を、さらに強靭な靭帯で補強している関節が仙腸関節なのです。
また、仙腸関節に垂直方向への荷重がかかると仙骨は前下方に回旋しようとするのですが、それも楔形の形状により防がれます。
仙腸関節は歩行などの下肢の動きに応じて前後屈や回旋などの荷重にさらされます。
よって、もし仙腸関節が動きの大きい関節であれば身体や下肢の動きにより骨盤輪に大きな負荷が生じますが、逆に全く動かなくても応力が集中してしまい負担は大きくなります。
仙腸関節は3~5㎜程度の小さな動きにより大きな応力を緩和することで安定性と可動性を兼ね備えた関節です。そのために多くの靭帯で負荷を吸収し関節を補強しているのです。
仙腸関節障害について
仙腸関節障害とは
中腰での作業や負担の大きい動作、あるいは繰り返しの作業による負荷や、それらによる骨盤周囲の筋肉の協調運動の破綻が生じます。
すると、仙腸関節の関節面に微小なズレや不適合などが起こり、それにより運動障害などの機能障害を起こすことで痛みが発生すると考えられています。
仙腸関節障害になると
仙腸関節障害の主な症状は腰痛や臀部痛、そけい部痛または下肢痛です。それはぎっくり腰のように急激に痛みが出ることもあれば、長期間慢性的に痛みが続くこともあるようです。
坐骨神経痛についてはこちら>>坐骨神経痛―おしりや太もも、ふくらはぎ、足趾の痛みやしびれ
また、痛みが無くても、腰やお尻のこりや違和感、あるいは動きの悪さなどを感じることもあるようです。
人により異なりますが、前かがみや後ろに反ったとき、あるいは腰を捻るなどの動きの時に痛みが強くなることが多いと思われます。
仙腸関節障害が疑われるときは
痛みを感じる部位を自ら人差し指でさして示してもらうワンフィンガーテストや、仙腸関節への疼痛誘発テスト(Gaenslenテスト・Newtonテスト・Patrickテスト)を行います。
テストの結果、仙腸関節由来の痛みが疑われれば、ブロック注射を痛みのある仙腸関節の部位に注入し、痛みが緩和されるかどうかを確認することにより判断を深めます
- Gaenslenテスト
患側さんにベッドの端に仰向けに寝ていただき、症状のない側の膝を曲げて胸に抱え、症状のある方の足をベッドの端から外側に出し垂らすようにして、骨盤を反らす力がかかる様にします。
それにより仙腸関節に疼痛が生じれば陽性とします。
- Newtonテスト
患者さんにうつ伏せで寝ていただき、患者さんの仙骨部を手掌で強く圧迫することで仙腸関節に疼痛が生じれば陽性とします。
- Patrickテスト
患者さんに仰向けで寝てもらい、症状がある側の膝を曲げ反対側の膝あたりに足部を乗せて膝を外側に倒し、腸骨と倒した膝を圧迫することで股関節を開くようにした際に、仙腸関節に疼痛が生じれば陽性とします。
仙腸関節障害を回復させるには
安静を基本として骨盤ベルトでの固定、腰部や臀部の筋肉への施術などがあります。
また、強い症状のために日常生活に支障をきたす場合には、仙腸関節の微小な動きを止める手術(仙腸関節固定術)が行われることがあります。
【仙腸関節のズレについて】
もし仙腸関節がずれていると判断された場合、ずれるということは仙骨と腸骨を繋ぎとめている靭帯が伸びるか切れているということになります。
よって、ずれていると判定された場合は、痛めてから数日というような状態でしたら強固な固定をしっかりと行えば回復が見込めると思われます。
しかし、2~3か月以上経過したものでしたらずれた仙腸関節が元の位置に戻り安定することはありません。
ずれという言葉の捉え方は、医療機関や治療院によっては全く違う意味で使っていると思いますので、しっかりと質問をして自分の体が本当はどのような状態になっているのかを確認することが大切です。
腰の痛みが回復しない時や今までとは違う感じの痛みを腰周りに感じる方、なぜ痛むのかの理由が見つからない方はぜひ一度当院へご相談ください。
大阪市住吉区長居4-5-18
藤田鍼灸整骨院
06-6698-4568
参考文献
村上 栄一(2007)『仙腸関節由来の腰痛』日本腰痛学会雑誌 13巻1号 40-47
森本 大二郎・井須 豊彦・金 景成・菅原 淳・濱内 祝嗣・下田 祐介・笹森 徹・松本 亮司・磯部 正則(2010)『仙腸関節障害の治療経験』脊髄外科 24巻1号 6-11
矢吹 省司(2007)『仙椎・仙腸関節』最新整形外科学大系.中山書店