脊髄腫瘍:頚部・背部・腰の痛み、しびれ、感覚障害、筋力低下、歩行障害、上肢の巧緻運動障害など
脊髄腫瘍とは
脊髄やその傍らに存在する神経根、クモ膜,硬膜、神経鞘、さらに脊柱管内の軟部組織や椎体から発生する腫瘍の総称です。
脊髄腫瘍は発生する場所により次の3つに分類されます。
- 硬膜の外側にできて硬膜の外から脊髄を圧迫する硬膜外腫瘍
- 硬膜内側の脊髄と硬膜の間に腫瘍ができて脊髄を圧迫する硬膜内髄外腫瘍
- 脊髄の中から発生する髄内腫瘍
それぞれの割合は、硬膜外腫瘍が約半数、約35%が硬膜内髄外腫瘍、約15%が髄内腫瘍といわれています。
発生する頻度は10万人あたり1~2人で、脳腫瘍の1/5~1/10程度です。
硬膜外腫瘍では
転移性腫瘍(悪性)が最も頻度が高く、脊椎を壊しながら大きくなり脊髄を圧迫します。
硬膜内髄外腫瘍では
脊髄からでた神経根から発生し脊髄を圧迫する神経鞘腫、硬膜から発生し腫瘍の増大とともに脊髄を圧迫する髄膜腫が頻度として高いです。
いずれも通常は良性でゆっくり発育し、画像診断でも脊髄との境界は比較的はっきりしています。
髄内腫瘍では
脊髄組織を形成する細胞である神経膠細胞から発生する神経膠腫(上衣腫、星細胞腫)が多くの割合を占めます。
脊髄の中から発生し周囲の脊髄組織に浸潤するため、画像診断では腫瘍と脊髄の境界は不明瞭です。
多くは良性ですが、悪性の場合治療が困難となることもあります。
症状としては
はじめ手足の感覚が障害され、局所の痛みが出現することがあります。
腫瘍が増大して脊髄の圧迫が強くなるにつれ、手足の麻痺が出現し歩行障害や上肢の巧緻運動障害、更に進行すると失禁や排尿障害などの症状も出現します。
腫瘍は発生した脊髄の場所により症状は違ってきます。
脊髄腫瘍の多くを占める良性の腫瘍では、数ヶ月から数年の経過で症状が進行し、悪性の腫瘍では症状が早く進行します。
診断としては
症状や神経検査(体のどの領域に運動障害や感覚障害、痛みを生じているかなど)で脊髄腫瘍を疑った場合、MRI検査やCT検査を行います。
腫瘍の種類を確実に診断するため、病変部位を採取して顕微鏡で検査する病理検査が必要となります。
治療としては
腫瘍の種類や悪性度、周囲の正常組織との関係性、症状の程度などを総合的に考慮して判断していきます。
治療が必要と判断された場合には、手術療法や化学療法、放射線療法など状況に応じて選択されます。
良性腫瘍で大きな症状を呈していない場合には、保存的に経過をみていくこともあります。