大阪市住吉区長居藤田鍼灸整骨院
肩関節脱臼:肩の痛みや腫れ、肩を動かせない、肩が外れた、肩や腕、指にしびれを感じるなど
肩関節は、鎖骨、肩甲骨、上腕骨頭構成され、腕の骨の一番上の部分の丸くなっているところ(上腕骨頭)と肩甲骨の外側にある小さなお皿のような部分(関節窩)で作られる球関節です。人間のすべての関節(31関節)の中で動かせる範囲が最も広い関節です。
肩関節脱臼とは
膝や腰、股関節などであれば骨同士の接する範囲が広かったり、片方の骨のくぼみにもう片方の丸い部分がはまったりして安定しているのですが、動きに制限がかかるということになります。
それに対して肩関節は、骨同士の接する範囲が狭いために、動かせる範囲は広く非常に複雑な動きが可能ですが、その反面、不安定な関節となるため外れたりズレたりしやすい関節となるのです。
その安定性のない肩関節は、関節包、関節唇、関節上腕靭帯、上腕二頭筋長頭筋腱、腱板(棘上筋・棘下筋・小円筋・肩甲下筋)といった軟部組織により補強され安定性をもたらされています。
それらが手を上げている時や下している時など、腕の肢位により働く軟部組織を変えながら肩関節を安定させているのです。
そして、軟部組織であるがゆえに柔軟性があり動く範囲を獲得できるのです。
しかし、軟部組織による補強部分は強い力が加わると痛んだり切れたりします。肩関節に強い力が加わることで関節唇や靭帯、関節包が損傷し上腕骨頭が正常な位置から外れてしまうことが肩関節脱臼となります。
肩関節脱臼の特徴
肩関節脱臼の種類は、前方脱臼・上方脱臼・後方脱臼・下方脱臼の四種類が有りますが、圧倒的に多いのが肩関節脱臼の約95%以上を占める前方脱臼です。
脱臼方向による特徴
前方脱臼では、上腕が体の前・外方向(前外側)に離れ、後方脱臼では、上腕は少し体から離れる程度または身体に付いた状態で、腕全体は内側に捻るかたち(内旋位)になっています。また前方脱臼では肩峰という肩関節の1番外側にある出っ張りの下がへこみます。
下方脱臼では腕を横に挙げた状態で、下には下がりません。腕を上に上げた状態になることもあります。
上方脱臼は、ほとんどの場合、腱板損傷を伴う脱臼です。
これらはすべて上腕骨頭が移動する位置により、腕の上がり具合や捻り具合が変わり、いずれの場合も腕は固定され(ロッキング)動かすことは厳しい状態となります。
また、全脱臼の中でも肩関節脱臼が50%を占めます。
肩関節をはじめて脱臼する時、健康な関節でしたらよほどの強い外力が加わらなければ簡単には脱臼しません。
しかし、初回の脱臼時に肩関節を安定させる骨、軟骨、靱帯、関節包、腱の損傷や摩耗が起きているために2回目は、初回よりも弱い外力でも脱臼を起こすことになります。
この2回目の脱臼は50%(若年者のみなら66%~94%)の人に起こるとされ、特に脱力時に外力が加わるとよく外れます。
肩関節を安定させる関節包の厚くなっている部分である下関節上腕靭帯の破綻が関節窩側で起こるものは、バンカートリージョンやバンカート損傷と言われています。このバンカートリージョンは初回脱臼時のほとんどに見られ、バンカートリージョンは関節の安定性を大きく損なうために、最近ではバンカートリージョンが確認されると関節鏡での修復がよく行われます。
さらにこの傾向は脱臼を重ねるごとに顕著になり反復性(習慣性)脱臼と言われる状態になります。
受傷原因としては
転倒や転落により手や肘を地面に着くことで、間接的に肩へと衝撃が伝わることで脱臼をすることが多いです。
肩関節脱臼を発生しやすいスポーツとしては
ラグビーやアメリカンフットボール、柔道などのコンタクトスポーツ、スキーやスノーボードによる転倒など、強い力や捻る動作が肩関節に加わることが多いスポーツでよく発生します。
交通事故による脱臼も多いです。
症状としては
脱臼直後に激しい肩の痛みがあり、脱臼した上腕骨頭がずれる方向によって腕は特徴的な位置に固定され動かすことが出来なくなります。
また、肩や腕、指などにしびれが生じることもあります。
肩関節脱臼が発生したら
受傷状況を確認し、骨折や神経損傷などの合併損傷の有無や、ロッキングされた腕の肢位や骨頭の位置などをみて脱臼方向の判断をつけます。
レントゲン、CTなどがあればそれらを使って確認を行います。出来れば関節唇の損傷状態を確認するためにMRIも行います。
肩関節脱臼の合併症や合併障害として
腱板や関節唇などの軟部組織の損傷、骨折、血行障害や神経損傷を伴うこともあるので、手指を触った時の感覚や、肘や手指を曲げ伸ばしできるかなどの確認が必要です。
また軟部組織損傷としては腱板を損傷や断裂をしていることが多いために、脱臼の時点でも患者さんに伝えておくことが大切です。
治療としては
脱臼の整復後に肘を曲げ、三角筋で吊る形で前腕を胸に付け3週間程度の固定をすることが多いのですが、約50%(若年者66%~94%)の方は再発します。
しかし最近では外旋位固定と言って肘を曲げ腕は外側へ向ける前へならえの形で固定すると再脱臼をする確率が19.7%(若年者27.8%)前後まで下がると言われています。
よって全員が手術をした方が良いとは言えないようです。
肩関節脱臼は年齢や筋力、肩関節の安定性、さらには今後どのような生活や運動を行っていくかによって再脱臼の確率は変わってきますが、初回脱臼の時には手術はしないことが多いと思います。
初回で手術をするケースは運動選手でしっかりとした肩関節の安定性が必要な方がそれにあたると思います。
2回目以降で何度も脱臼を起こす場合は手術を考える必要があります。
肩の脱臼のリハビリや肩の痛みの施術は、ぜひ当院にご相談ください!
大阪市住吉区長居4-5-18
藤田鍼灸整骨院
06-6698-4568
参考文献
信原克哉『外傷性肩関節脱臼』プラクティカルマニュアル 肩疾患保存療法 第1版,129-137.金原出版株式会社.1997
林田賢治・米田稔『肩関節脱臼』最新整形外科学大系,第13巻,章,144~151.中山書店.2007