四十肩、五十肩、肩関節周囲炎、腱板炎、腱板損傷、肩の痛み、肩のうずき、腕が上がらない、肩が痛くて眠れない、上腕二頭筋長頭腱炎、石灰沈着性腱炎、リトルリーガーズショルダー、骨端線離開、肩甲上神経麻痺、長胸神経麻痺、腋窩神経麻痺、肩関節不安定症、肩鎖関節脱臼、肩関節脱臼など
大阪市住吉区長居西藤田鍼灸整骨院>>http://shinkyuuseikotsu.com/
はじめに
肩の痛みを発する疾患には腱板損傷、腱板炎、肩関節周囲炎、上腕二頭筋長頭腱炎、肩峰下滑液包炎など、さまざまな病態があるのですが、それらの多くは四十肩や五十肩という疾患名で治療をされることが多いと思います。
肩に痛みがある場合、肩関節のどこがどのように傷んでいても出来るだけ速やかに痛みを押さえたい場合は、シップや痛み止めを用い、さらに痛みが強い場合は痛み止めやステロイドの注射のご相談をされることが望ましいと思われます。
そうして痛みが落ち着いたなら次は痛みを出したその部位の損傷部分を回復させていくことと、再び痛めないための予防策を行う必要があります。
そのためにはどの部位がどのようにどの程度傷んでいるのかをはっきりとさせる「見極め」が必要になります。
部位や痛め方、痛めた程度などがハッキリとしなければ、施術やリハビリの方法やそれを始めるタイミング、どの程度まで行っていいのかなどが変わってくるからです。
それが出来なければやってはいけない力を加えたりやらなければいけないことが出来なかったりと、早期回復からどんどんと遠のいていくことになります。
当たり前に回復しない、回復が遅く長引く原因は「見極めの悪さ」であることは少なくないのです。
最速の回復とは「最も必要なことを当たり前にできていること」によって実現するのです。
見極めは・・・
・スポーツや外傷など、はっきりとした理由があり、ペインフルアークサインやドロップアームサインなどの検査法で陽性の場合は腱板損傷
・スポーツや外傷などはっきりとした理由があり、上記のテスト法で痛みを感じる程度の場合は腱板炎
・ヤーガソンテストやスピードテスト、ストレッチテストにて陽性の場合は上腕二頭筋長頭腱炎
・インピンジメントテストで痛みを感じる場合は肩峰下滑液包炎
・夜間に耐えがたいような強い激痛が出る場合は石灰沈着性腱炎
・四十代でなれば四十肩
・五十代でなると五十肩
・特別な原因がなく日常生活で痛みを感じる場合は肩関節周囲炎など
この様に肩関節の病態はこれらの徒手検査法や年齢的な特徴、痛みの強さや出方の特徴などを考慮しながら総合的に判断していきます。
そして見極めによりどこがどのように傷んでいるのかが分かれば、その部分を回復させたり再発をさせたりしないためには何が必要なのかが見えてきます。
痛めた筋肉と傷めた程度が違えば動かしてはいけない方向や運動を再開する時期はかわりますし、痛めた部分が違えば腕を上げてはいけない角度や行ってはいけない手の使い方なども違ってきます。
これらのこと一つ一つは「凄いこと」のようには聞こえませんが、これらの小さなことを理解したうえで1日24時間、それを1週間そして1か月と過ごしているうちに「それを知らない場合」とはとても大きな差が出てきます。
いくらすごい治療を受けたとしても、当たり前のことをその治療時間以外に出来ていなければプラスになることが少なくマイナスになることが多くなるために回復しないのです。
当たり前のことをせずに回復出来たとしたら、当たり前のことが出来ていればもっと早く回復できたはずなのです。
当院では
当院では肩に限らずしっかりと患者さまのお話を聞き、しっかりと徒手検査を行うことで30年以上培ってきた「見極め」の技術をもちいて初めの「見極め」をしっかりと行います。
そうしてその方にとって何が良くて何が悪いのか、どのような動きをしてはいけないのか、どのような運動を今はどの程度行えばいいのかなどを施術中必ずお伝えします。
当院では根拠のある正しい施術による本当の回復を目指しています。
それは施術を行うことによる回復はもちろんですが、施術時間以外にも回復できるようにすることが重要です。
それには整形外科で学んだ判別と回復方法の知識と、痛めた身体の回復を実際に行ってきた長年の経験があるほどに行える技術です。
身体の本当の回復は当院にぜひご相談下さい!
肩の障害
以下は肩の障害の特徴をまとめたものになります
1.五十肩・四十肩(・1-a変形性肩関節症・1-b肩峰下インピンジメント症候群・1-c腱板損傷、腱板炎・1-d上腕二頭筋長頭腱炎)
2.腱板損傷
3.上腕二頭筋長頭腱炎
4.石灰沈着性腱炎・石灰沈着性腱板炎
5.リトルリーガーズショルダー
6.上腕骨近位骨端線離開
7.肩関節不安定症
8.肩甲上神経麻痺
9.長胸神経麻痺
10.腋窩神経麻痺
11.肩鎖関節脱臼
12.肩関節脱臼
1.五十肩・四十肩
肩の痛み、腕を伸ばすと肩が痛む、腕を上げると肩が痛む、腰や後頭部に手を回すと肩が痛むなど
五十肩、四十肩とは?
いわゆる五十肩は、特にきっかけとなる原因に〝これ〟といったものがなく、50歳前後に発生する動きの制限を伴った肩の痛みの総称です。
それらが50歳に起これば五十肩、40歳に起これば四十肩と言われますが同じものです。
五十肩や四十肩を詳しく調べたり、明確な原因があったりすると腱板損傷や断裂、肩峰下滑液包炎や上腕二頭筋長頭腱炎などと呼ばれることになりますが、そこまでたどり着かない40~50歳代に出た肩の痛みの総称ということになります。
また、理由は分かりませんが、五十肩や四十肩に一度なるともうならないと思われている方が多いのですが、五十肩や四十肩は何度でもなる可能性があります。年齢も20歳や30歳、70歳であろうと五十肩と同じ状態はなります。ただ、50歳ではないので五十肩と言われないだけなのです。
40歳~60歳の頃までは肩の腱板や関節包、上腕二頭筋腱などの組織が加齢により弱ってきているが、しっかりと仕事はしている状態です。組織は弱っているが、20歳や30歳の若い人と同じような仕事をしていると、肩を痛める確率は上がるために40代50代の方の悩みは多くなり40肩50肩が有名になるというわけです。
しかし最近では、60歳であっても働いている方は多いので、60肩?でお悩みの方も多いのではないでしょうか?
五十肩になると
五十肩の痛みの特徴
五十肩の痛みの特徴は、以下の様なケースが多いです。
- 肘を伸ばした状態で手を身体の側方から耳に着くまで上げていく外転運動や
- 腕を水平以上の高さに上げる運動で痛む
- 手を伸ばし、身体から遠い位置のものを取ったり動かしたりする運動で痛む
- 夜間になると肩の痛みで目が覚める
- 就寝時の痛みで腕を置く位置に困る
- 肩を動かすと上腕や前腕に痛みを感じるために腕が痛んでいるように思える
- じっとしていても疼く時がある
- 手を後ろに回して帯を結ぶような動きで痛む(結帯運動)
- 手を後ろに回して髪の毛を結ぶような運動(結髪運動)で痛みが出る
- 肩の前面を中心に押してみるとズキッと痛む箇所がある
- 肩甲骨周囲の筋肉を押さえると痛む
なお、四十肩や五十肩では、肩周りの筋肉の萎縮はありませんが、まれに腕を使っていないがための軽い萎縮が出ることもあります。また、通常の四十肩、五十肩では熱感や腫れは出ません。
五十肩の判定
- 肘を伸ばし手のひらを下に向けたまま、腕を横方向に顔の横の方へ向かって上げていくインピンジメントサイン
- 肘を伸ばし手のひらを上に向けたまま、腕を横方向へ顔の横に腕が付くように上げていった時に60度から120度の範囲で痛みが出るペインフルアークサイン
- 肘を伸ばし手のひらを上に向け腕を前方に上げてもらうその腕が上げれないように抵抗をかけるスピードテスト
- 肘を直角にした状態で手を親指が真上へ向くように前に出し、その手の手のひらを上へ向ける動きに抵抗を加えるヤーガソンテスト
などの徒手検査法を行い、痛みが強い場合や繰り返す場合、じっとしていても疼く場合などは、レントゲン検査や関節造影、MRIや超音波での確認が行われます。
当院では徒手検査の後にエコー検査を行います。
注意点
五十肩は基本的な回復方法で十分回復はするのですが、回復過程が良くない場合や痛みの出方が基本パターンから外れている場合は、他に問題がないかの注意が必要です。
甲状腺疾患や心疾患、糖尿病や頚椎症性神経根炎などを疑う必要もあります。
また、腱板の断裂や石灰沈着性腱炎、上腕二頭筋長頭腱断裂などは五十肩という病名で一くくりにせずに、しっかりとしたジャンル分けを行い、それに必要な回復プログラムを行います。
以下は五十肩に含まれる疾患の説明と、五十肩とはせずに考えていく必要のある疾患です。
1-a 変形性肩関節症(四十肩・五十肩)
肩関節は肩甲骨と鎖骨と上腕骨で構成される関節です。
肩関節をもう少し専門的に厳密に言いますと、肩甲骨と上腕骨頭より構成される肩甲上腕関節のことを肩関節と呼ぶ場合と、肩甲上腕関節、肩鎖関節、胸鎖関節の3つの関節で肩関節と呼ぶ場合とがあります。
それら肩関節を構成する部分の中で上腕骨頭や肩甲骨関節窩の軟骨の変性や破壊が生じ骨棘ができるような状態を変形性肩関節症といいますが、リウマチによるものは肩関節症から除外します。
変形性肩関節症の原因としては
骨折や脱臼などの外傷、加齢に伴う骨・軟骨の老化、手術によるものもあります。
また、血流の悪化や、ステロイド薬の多量投与による上腕骨頭壊死や腱板断裂なども原因となることもあります。
症状としては
初期には肩の痛みや可動域制限、中期から末期になると関節の腫脹や強い痛み、動かすとゴリゴリといった礫音を感じることもあります。
痛みは腋窩から肩関節の外側に痛みを訴えることが多いようです。
肩関節は、膝関節や股関節などの荷重のかかる関節に比べ荷重がかからないので関節面の負担は少なく、発症する割合は高くなく、発症しても症状は比較的ゆっくり進行していくと言われています。
治療としては
まずは薬物療法や運動療法などの保存療法が行なわれます。
保存療法を行っても症状が改善されなかったり、強い痛みや可動域制限によって日常生活に支障をきたしてしまったりする場合には、手術療法も検討されます。
変形の程度が軽い場合には、傷んだ軟骨や炎症部分を取り除いたりする関節鏡視下手術、変形の程度が高度の場合には、人工関節置換術が行なわれます。
上腕骨の一番上の丸い部分を上腕骨頭といい、上腕骨頭の大結節という部分には腱板という薄い板状の腱が付いています。
その腱板の上には肩峰下滑液包というクッションがあり、さらにその上には肩甲骨外側の前方にある烏口突起と肩甲骨の一番外側の部分である肩峰、それらを結ぶ烏口肩峰靭帯からなる烏口肩峰アーチがあります。
肩峰下滑液包は腕を上げるために重要な腱板が、その上にある肩峰や烏口肩峰アーチにこすれて痛まないようにしています。
1-b 肩峰下インピンジメント症候群(四十肩・五十肩)
肩峰下インピンジメント症候群とは
腕を上げていく時に腱板の付いた上腕骨骨頭の大結節が、烏口肩峰アーチと衝突することが原因で疼痛を引き起こす状態のことをいいます。
腕を上げていく過程の中で、上腕骨骨頭と肩峰の間に腱板の一部や肩峰下滑液包などが挟み込まれることが繰り返され刺激されることにより、滑液包に炎症や浮腫、出血が起こるのです。
はじめのうちは安静にすることにより通常は回復していきますが、繰り返し刺激を受け続けると、腱板の滑液包側の不全損傷や、肩峰下に骨の棘が出来たりして痛みがなかなかとれなくなることもあります。
慢性化し、腱板や関節包に障害が広がると、安静時痛(夜間痛)や可動域制限を伴うこともあります。
原因としては
- 腱板自体の機能不全による上腕骨頭が上方偏位
- 肩峰下の骨棘
- 腱板の加齢変性
- 大結節骨折の変形治癒
- 肩甲骨機能不全などがあります。
判別としては
腕を伸ばしたまま外側に上げていった時に60度~120度の範囲で痛みが出るペインフルアークサイン(有痛弧徴候)
患者さんの肩甲骨を押さえて動かなくした状態で腕を前方に90度上げてもらうことで痛みを見るインピンジメントサイン
あとはレントゲン、エコー検査、MRIなどの画像診断も合わせて行います。治療としてはまた、痛みが非常に強い場合などは、痛みの緩和を目的に消炎鎮痛剤などの薬物療法や局所注射療法が行われたりします。 肩の痛みでお困りの方は、お近くの肩に詳しい専門家にご相談の上、正しい対処をしていきましょう。当院では施術は肩峰下滑液包がインピンジ原因となった問題点を探し出し、それを排除します。そして自宅でできるケアを伝えることで痛みや再発を防いでいただきます。
肩峰下インピンジメント症候群だと判断した場合は、その方の年齢や職業、目的の運動レベルを考慮して医療機関の受診をお勧めする場合と、当院にて施術を行う場合とがあります。
肩峰下インピンジメント症候群は、正しく対処していくことにより多くの場合は回復していきます。
しかし、保存療法を3~6ヵ月行っても症状が改善されないような場合は、まれに手術が選択されることもあります。
そして痛みが軽減されると、肩関節や肩甲帯の柔軟性の向上のストレッチや肩関節周囲の筋力アップを行っていきます。
保存療法の場合、痛みを感じる動作をなるべく避け、三角筋や上腕筋、僧帽筋の緊張を和らげる手技などを行います。痛みが強ければ三角巾などで腕を吊ることで肩関節の安静を図ることもあります。
1-c 腱板損傷・腱板炎(四十肩・五十肩)
スポーツや外傷などはっきりとした理由があり、腱板損傷特有のテスト法で強い痛みを感じたり腕が上がらなかったりというような状態の場合
若者で特別原因がなく日常生活程度でなっていそうなら肩関節周囲炎と言うような感じで呼ばれていると思います。腱板とは肩関節を動かすための筋肉の腱の部分で、肩関節の外側にある大きい筋肉の三角筋の内側にあり、前から肩甲下筋・棘上筋・棘下筋・小円筋の4つの筋肉の腱により構成されています。 また、肩関節の運動においては、
その腱板は、上腕骨骨頭を棘上筋が上方へ、棘下筋と肩甲下筋が下方へひきつけることで、上腕骨骨頭を肩甲骨関節窩に押し付け、肩を安定させる重要な役割をしています。
肩甲下筋 は上腕骨の小結節に、他の3つの筋肉は上腕骨の大結節に付着しています。
棘上筋が三角筋中部線維と共同して上肢を体の外側から上へと上げる運動
棘下筋・小円筋は、上肢を体の内から外へと捻る動き(外旋)
肩甲下筋は大胸筋・広背筋・大円筋などの筋群の助けを受けて、上肢を体の外から内へと捻る動きを行います(内旋)腱板が痛むときは加齢による腱板の老化が基盤にあることが多く、そこに強い力が加わった際や酷使することによって摩耗するように部分的に断裂します。
腱板損傷の特徴としては
大きな力が加わる場合は、転倒などにより肩を打ちつけたり手をついたり、野球の投球動作を繰り返すことなどがあります。
- 肩の下から肘の間に痛みを感じることも多く、肩より腕を痛めていると感じてしまう。
- 手を前方に伸ばす、水平以上に上げる、手を頭の後ろや腰に回す(結髪運動、結滞運動)などの動きで肩の外側や前方に痛みが出る。
- 体の前面でお腹の前くらいの位置の作業では痛みが出にくい。
- 手のひらを上にして、体の側面方向から腕を上げて行くとより痛みを感じる。
- その時は、特に水平くらいの位置で特に痛みを感じるあるいはその位置では手をあげていることが維持できない。
- しかし、水平位置を超えて真上になると痛みが和らぐ(ペインフルアークサイン)
- 手のひらを下に向けて体の側面方向から上げて行くと、腕を上げるほどに痛む(インピンジメントサイン)
- 就寝時には肩が重く疼くような痛みがあるので腕の置き場に困る。
- 痛みで眠れないまたは痛みで目が覚める。
肩の障害の多くはこの時に肩を動かし過ぎることでかえって悪化を招いているケースをよく見かけます。
肩の障害は長期間肩を動かさないことにより関節の拘縮を起こすことがよく知られています。よって施術者も患者様も動かさないことによる拘縮を恐れてついつい早めに動かしてしまうのだと思います。
基本的には、痛みと炎症が強い間は安静を中心として施術を行います。
腱板損傷の治療は、痛みの程度や損傷度合、年齢、職業、初発か何度か繰り返しているのか、生活における患部への負荷の量などを考慮したうえで選択する必要があります。
と言ったような肩の運動障害や痛みが出ることが多いです。
損傷の程度や年齢、運動量など様々な条件をしっかりと把握し
毎回調子を伺い
施術を正しく行い
運動を始める時期や筋トレ、自動運動などの運動内容を適切に行う (現役のハードな運動を続けて行く必要があるスポーツ選手などには必要だと思います)肩の痛みや腕の痛みなどでお悩みの方は、お近くの専門家に肩の状態を詳しく見て頂き、適切な見極めと適切な施術メニューを作ることが大切だと思います。石灰沈着性腱板炎・石灰沈着性腱炎肩の石灰沈着性腱板炎は、夜間突然に肩の激痛で始まることが多い疾患です。肩を回したり動かしたりすると激痛が走り、手を上げられなくなったり痛みで眠れなくなったりします。また、じっとしていても疼くような痛みや熱感を伴うことも多いのですが、このじっとしていても疼くような痛みが肩に出て続くときには石灰沈着性腱板炎を疑うべきです。石灰沈着性腱板炎は、症状の出かたによって急性型・亜急性型・慢性型に大きく分けられます。
ある程度以上の損傷で長く痛みが取れなかったり、腕が上がらないなどで日常生活に支障が出てしまったりする場合は手術療法も検討しますが、整形外科勤務時代を含めてそれもありませんでした。
それでも関節の痛みや動く範囲が改善されずに関節が動かなくなりそうな場合は、関節を広げる運動を追加することになるのですが、当院では無理に関節を広げたケースはありません。
これらをきっちりと行うことが出来れば自然に痛みは取れ、腕も上がる様になってきます。腱板損傷は、焦って早めに動かしてしまったり、逆に遅すぎたりどうしようもない痛め方をしたりしていなければ日常生活に支障のない程度には痛みが取れることが多いのです。
1~4週間ほど強い症状が出るのが急性型で比較的若い人に起こります。
中等度の症状が1~6ヶ月ほど続くのが亜急性型
運動時痛や使い過ぎによる痛みなどが6ヶ月以上続くのが慢性型です。慢性型は比較的高齢の方に多くなります。原因としては、肩腱板内に石灰といわれる物質(リン酸カルシウム結晶)が付くことが関係します。徐々に溜まった石灰が破綻し、石灰の成分が外へ出てしまうと急性の炎症性の激しい痛みを生じ、痛みにより動きの制限も起ることが多くなります。(石灰が沈着する場所によって、制限される動きが異なります。)石灰がたまる原因は不明ですが、初期は泥上の白い結晶として存在し、時が経つにつれて練り歯磨き粉状、石膏状へと硬く変化していくそうです。また、石灰が溜まるからと言って必ずしも痛みが出るというわけではありません。他のことで撮ったレントゲンをみた時に「石灰ありますね」となることもありますし、石灰沈着性腱板炎として出ていた激しい痛みが無くなったにもかかわらず、レントゲン上では石灰がまだ残っている場合もあります。好発は、40~50歳代の女性に多くみられるという意見が多いです。
石灰沈着性腱板炎は我慢してもあまり意味がありません。当院でも石灰沈着性腱板炎を疑った場合は、医療機関の受診をすすめています。
痛みがある間の過ごし方としては痛みに逆らって動かさないことや、三角巾で腕を吊るなど、痛みの出ない位置に腕を置いて過ごすことが正しい過ごし方です。四十肩や五十肩と間違い動かしてしまい、悪化させたうえで相談に来られることもよくあります。(四十肩も五十肩もいきなり動かすのは良いとは思いませんが)
ただし亜急性期や慢性期などで、硬く膨らんだ石灰が原因で、強い痛みや肩の動きに支障が大きく出る場合などは、手術で石灰を摘出することもあります。
この疾患は、一定期間を過ぎるとほとんどの場合、痛みは治まりますので、その間は注射で痛みを抑えることがおすすめです。
また、肩を強く打つとか肩に無理な負担をかけてしまったなど、原因に思い当たることがないにもかかわらず痛みが出る場合にも疑うべき疾患です。
1-d 上腕二頭筋長頭腱炎(四十肩・五十肩)
力こぶを作る筋肉を上腕二頭筋と言い、その筋肉は上に行くと二つに分かれて腱となり、長い方を長頭、短い方を短頭と言います。(だから二頭筋!)
その下から上へとがって来た長頭は、肩関節の正面、上腕の骨の頭の部分の所で90度カーブしていて、そこで炎症や滑膜炎を起こすと上腕二頭筋長頭腱炎となります。
上腕二頭筋長頭腱炎は
手のひらを前方に向けしたまま手を垂らし、肘を伸ばしたままその手に抵抗を加えて手を前に上げてもらう。
その時に肩関節前面に痛みが出るスピードテスト。
肘を90度屈曲位で、内側から外側に捻る手に抵抗を加えた時に肩が痛むヤーガソンテスト、肩関節前面を直接押さえて痛みを見る事などで判断をする事が出来ます。
上腕二頭筋長頭腱炎の施術は、安静を中心とし、筋肉を緩めたりストレッチを行うことで再発を防いでいきます。
上腕二頭筋長頭腱炎は、比較的経過の良い腱の炎症ですが、時には腱が切れたり、切れずに腱が付いている部分の骨ごと引き剥してしまう事がありますから、痛みがなかなか引かない場合は、詳しい検査や良く見てくれる病院や治療院へ行く必要があります。
2.腱板損傷
肩が痛い、腕が上がらない、肩が痛くて眠れないなど
肩関節について
肩関節は、鎖骨と肩甲骨、上腕骨で作られた関節で、人の関節の中で最も動かせる範囲が広い関節です。
肩関節は、肩甲骨の関節窩と上腕骨頭が関節し、それを腱や靭帯、関節包、筋肉が支える形で作られています。
そして、肩関節を作る腱や靭帯、関節包、筋肉にはゆとりがあるために、その腱や靭帯などが目いっぱい緊張するまでは肩関節を動かすことが出来ます。
腱板について
肩関節周囲には17個の筋肉があり、その中の棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲下筋の4つの筋肉が上腕骨頭に付く腱の部分は腱板と呼ばれています。
インナーマッスルである腱板は回旋筋とも呼ばれ、肩関節を外に捻る外旋、内に捻る内旋、肩関節を真横に上げる外転、それを身体に近づける動きである内転運動を行います。
また腱板は、関節包や靭帯、関節唇、筋肉などの軟部組織や、関節包の中の圧力とともに、肩関節に安定性をもたらせ、ぐらつきを抑える働きをしています。
腱板損傷、腱板断裂とは
腱板損傷、腱板断裂とは、肩関節に重要な役割を果たしている腱板が部分的に損傷したり完全に切れたりしている状態で、40歳以上の男性の右肩に多くみられます。
腱板損傷の原因としては
腱板損傷の原因としては、ほとんどの場合、加齢による腱板の老化が基盤にあり、それを酷使することによって摩耗するように部分的に断裂します。
他に、転倒などにより肩を打ちつけたり手をついたりした時の外力、野球の投球動作を繰り返すなどのオーバーユースでも発症することがあります。
腱板損傷になると
腱板損傷になると、肩や腕の痛みにより腕をほとんど上げれない場合や、横に腕を上げていくと60度~120度の範囲のみ上げ辛く、120度を超えると再び上げやすい状態になります。その他、身体から遠くのものを取ろうとした時や、腰や後頭部に手を回すような動きでもズキッとするような痛みが出るために、身体の前で腕を上げないで行う作業のみが出来る状態になります。
腕を上げた時の肩の痛みは、肩の前や外側、後ろ側、上腕にも感じるため、上腕に感じる方は上腕の部分を痛めているような感覚だと思います。
しかし、腕を上げた時に動いている関節は肩関節ですから、腕に痛みを感じるとしても、実際は肩の関節(腱板)を痛めていることになります。
また、炎症が強いと夜間痛などがあり、痛みのために眠れなかったり痛みで目が覚めたり、寝る時の腕の位置により痛みが出るので辛い夜を過ごしている方も多いと思います。
腱板損傷を疑う時には
ドロップアームテストやインピンジメントテスト、ペインフルアークサインなどの徒手検査法や押して痛みの出る圧痛の部位を確認します。
さらに痛みの出方や腕の使い方、夜間痛やじっとしていても疼くのかなども合わせて聞いておきます。
そして上腕二頭筋長頭腱炎や石灰沈着性腱板炎、リウマチや肩峰下滑液包炎などとの見極めを行います。
必要な場合はレントゲンやエコー、MRI、関節造影などの画像診断も行います。
腱板損傷の治療は
腱板損傷は、痛みの程度や損傷度合、生活における患部への負荷などを考慮したうえで選択する必要があります。
急性期の痛みの強い間は、三角巾で1~2週をめどに強い痛みが落ち着くまで患部を安静にします。
その間も周りの筋肉を緩めたり血流を改善したり、痛みの出ない運動を行うなど、痛みの緩和や出来るだけ筋力を落とさないための工夫をします。
多くの場合、正しく保存療法を行なえば回復していきます。
しかし、保存療法で痛みや運動障害が回復しないときは、まれに手術療法が行なわれることもあります。
手術を行なったときは、約4週間の固定と2~3ヶ月の機能訓練が必要となってきます。
保存療法、手術療法どちらの治療を行なうとしても、関節を広げる運動や肩関節周りの筋力アップが大切です。
3.上腕二頭筋長頭腱炎
肩の前面の痛み、腕を動かすと肩が痛む、肘を曲げると肩の痛みが増すなど
上腕二頭筋とは
上腕二頭筋とは、腕の前面にあるいわゆる力こぶを作る筋肉のことです。肘を曲げたり(屈曲)、肘を90度に曲げて親指を真上に向けた状態から手のひらが上を向くように手を外側に捻ったりする回外の働きをします。
また、肩関節部では腱板とともに、上腕骨頭と肩甲骨の関節窩の位置関係を保つように、肩の安定性をもたらす働きもしています。
上腕二頭筋は、二頭筋という名前の通り、筋肉の上部が長頭と短頭という二つの筋肉の束に分かれています。
長頭は、長頭腱として肩甲骨関節上結節から始まり、上腕骨頭の前面(結節間溝)を通り、上腕中央部で短頭と合流して橈骨粗面と一部は前腕骨間膜に付きます。
長頭腱は、関節内部分、結節間溝部分、関節外部分に分けられます。
その中の結節間溝部分では、長頭腱は筒状の滑膜に包まれ横靭帯により結節間溝に固定されています。
上腕二頭筋長頭腱炎とは
長頭腱の結節間溝部分では、肩甲骨側から水平に入ってきた長頭腱が垂直方向に向きを変えるために摩擦やなどのストレスがかかりやすく、上腕二頭筋を使いすぎると炎症を起こしてしまいます。
上腕二頭筋長頭腱炎の好発年齢は20~40歳代で、腕を上げることが多いスポーツ(野球、水泳、テニス、バレーボル、ハンドボールなど)をする方によく見られます。
上腕二頭筋長頭腱炎になると
急性期では結節間溝部に強い圧痛や腫脹、熱感がみられ、肩を少し動かすだけでも痛みが出ます。
慢性期では、結節間溝部の圧痛と、物を持ち上げるなど力を入れて肘を曲げると痛みが出ます。
いずれの場合でも長頭腱炎では腕を動かすことは出来ます。
上腕二頭筋長頭腱炎のテスト
肘を曲げた状態から、前腕を外旋する力に抵抗を加えることで、肩に痛みを感じると陽性となるヤーガソンテスト
手のひらを上へ向け、肘を伸ばした状態から腕を前方に上げる力に抵抗を加えることで、肩に痛みを感じると陽性となるスピードテスト
肘を伸ばしたまま腕を待後ろに引き、肩に痛みを感じたら肘を曲げることで肩の痛みがなくなると陽性となるストレッチテスト
これらの徒手検査法に加え、結節間溝部の圧痛をみたり、その他の障害のテストを行ったりすることで、その他の障害を除外できると長頭腱炎である確率が上がります。
上腕二頭筋長頭腱炎は、基本的には単独の疾患であることが多いですが、たまに肩関節周囲の疾患を合併していることもあります。
上腕二頭筋長頭腱炎になったら
上腕二頭筋長頭腱炎は使いすぎによる腱の炎症のため、安静を保ち炎症を抑えることができれば、ほとんどの場合は回復します。
炎症が強い時にはアイシングや上腕二頭筋の緊張を緩めるための手技、ハイボルテージ療法や鍼治療などがおすすめです。
4.石灰沈着性腱炎・石灰沈着性腱板炎
急に起こる肩の激痛、突然肩の強い痛み、夜中に肩が痛む(夜間痛)、激痛で肩が動かせないなど
肩関節について
肩関節は、鎖骨と肩甲骨、上腕骨で作られた関節で、人の関節の中で最も動かせる範囲の広い関節です。
肩関節は、肩甲骨の関節窩と上腕骨頭が関節し、それを腱や靭帯、関節包、筋肉が支える形で作られています。
そして、肩関節を作る腱や靭帯、関節包、筋肉にはゆとりがあるために、その腱や靭帯などが目いっぱい緊張するまでは肩関節を動かすことが出来ます。
腱板について
肩関節周囲には17個の筋肉があります。その中の棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲下筋は腱板と呼ばれています。
腱板は回旋筋と呼ばれ、肩関節を外に捻る外旋、内に捻る内旋、肩関節を真横に上げる外転、それを身体に近づける動きである内転運動を行うことや、肩関節のぐらつきを抑えるための働きをしています。
石灰について
よく言われる石灰とはアパタイト結晶やリン酸カルシウム結晶のことで、骨の約70%はリン酸カルシウムの一種です。そのリン酸カルシウムは、ハイドロキシアパタイトから出来ているために、石灰はカルシウムやリン酸カルシウム結晶やハイドロキシアパタイト結晶と様々な呼び名になるようです。
石灰沈着性腱板炎について
石灰は、最初は濃厚なミルク状ですが時間と共に固まっていきます。
石灰沈着性腱板炎は、その固まったアパタイト結晶が腱板に付いたのち、アパタイト結晶が白血球に食べられたときに炎症を起こしたり、結晶そのものの成分や結晶の硬さにより組織を刺激したりすることで慢性的な痛みを出すものだとされます。
症状
石灰沈着性腱板炎のおもな症状は、肩の痛みや運動制限、夜間痛であり、夜間突然に肩の激痛で始まることも多いです。
痛みは石灰が溜まって体積を増していくことにより増してきます。
そして、石灰の成分が腱板から滑液包の下や滑液包内に破れ出ると、痛みは非常に激しくなります。
特徴
40~50歳代の女性に多くみられ、左右差はほとんど見られません。
石灰沈着は、棘上筋腱・棘下筋腱・小円筋腱・肩甲下筋腱・上腕二頭筋長頭腱のあらゆる場所に発生しますが、棘上筋腱での石灰沈着が最も多いと言われています。
痛みのため、肩を動かすことが出来なくなりますが、石灰が沈着する場所によって、制限される動きが異なります。
また、石灰沈着性腱板炎は、症状の出かたによって急性型・亜急性型・慢性型に大きく分けられます。
- 急性:強い痛みが長くても4週間、平均約2週間で軽減し、比較的若い人に起こります。
石灰物質が腱板内から肩峰下滑液包の下や滑液包の中に入り込むことで急性症状が出やすくなります。
- 亜急性:急性よりは軽い中等度の症状が1~6ヶ月ほど続きます。
亜急性型は石灰の刺激により肩峰下滑液包炎を起こし、そこに急性の炎症を起こす原因が時々加わった状態です。
- 慢性:可動域制限はないが、ペインフルアークサインを伴う運動時痛が6ヶ月以上続きます。
慢性のものは腱板内にある石灰が肩峰下滑液包を刺激して炎症を起こしたり、石灰が肩峰や烏口肩峰靭帯と上腕骨頭の間に挟まれたりするインピンジメント症候群となった状態です。
慢性型は比較的高齢の方に多くなります。
石灰沈着性腱板炎を疑うとき
患部を押さえてみることや、肩関節を動かした時の痛みの出方、痛みを感じた時の経過や日常生活での腕の使い方などを確認し判断材料とします。また、単なる腱板損傷、上腕二頭筋長頭腱炎などとの見極めも必要です。
何よりも夜中の激痛や、じっとしていてもうずくのかがポイントとなります。
石灰沈着性腱板炎が疑われたらレントゲンで石灰の確認を行います。
CTやエコー、MRIなどで沈着した石灰の位置や大きさ、腱板断裂の併発がないかなどの確認を行う場合もあります。
石灰があると必ず痛むのでしょうか?
石灰がたまる原因は不明ですが、石灰が溜まるからと言って必ずしも痛みが出るというわけではありません。
他のことでたまたま撮ったレントゲンを見た時に「石灰ありますね」となることもありますし、激しい痛みが無くなったにもかかわらず、レントゲン上では石灰がまだ残っている場合もあります。
よって石灰沈着性腱板炎の慢性タイプの場合と、石灰があるが今現在の症状とは無関係なので、石灰以外の痛みの原因に対しての施術が必要な場合があります。
石灰沈着性腱板炎になったとき
石灰沈着性腱板炎は一定期間を過ぎるとほとんどの場合、痛みは治まりますので、特に急性期は注射で痛みを抑えることがおすすめです。
亜急性の場合や慢性の場合などで、硬く膨らんだ石灰が原因で、強い痛みや肩の動きに支障が大きく出る場合などは、手術で石灰を摘出することもあります。
痛みがある間の過ごし方としては痛みに逆らって動かさないことや、三角巾で腕を吊るなど、痛みの出ない位置に腕を置いて過ごすことが正しい過ごし方です。
四十肩や五十肩と間違い動かしてしまい、悪化させたうえで相談に来られることもよくあります。(四十肩も五十肩も拘縮もない段階で無理に動かすのは良いとは思いませんが)
痛みがとれたら、温熱療法や運動療法(拘縮予防や筋力強化)を行っていきます。
5.リトルリーガーズショルダー
リトルリーガーズショルダー、小中学生の野球肩、投球動作時の肩の痛み、肩の付け根を触ると痛い、肩にだるさや動きづらさがあるなど
リトルリーガーズショルダーとは
リトルリーガーズショルダーは小学校高学年から中学生の成長期に発生する肩の障害の一つです。
それは、野球などの繰り返す投球動作のストレスが原因で骨端線が傷つき、骨端線部分の幅が広がったりずれたりする状態となります。
リトルリーガーズショルダーはピッチャーに多い疾患なのですが、内野手や外野手にも発生します。
骨端線とは
成長期の骨の両端には骨端線(骨端軟骨)という成長軟骨板があり、この部分で骨は成長していきます。
その骨端線部分は骨の間に存在するのですが、急激に骨が成長時期になると骨端線部分での結合力は弱くなります。
リトルリーガーズショルダーの原因としては
投球時、ボールが手から離れる瞬間(リリース)から腕を振り下ろすまでの間(フォロースルー)は腕の遠心力により上腕骨自体が強く引っ張られます。
その時の急激な上腕の内転、伸展、内旋という力は、上腕骨近位骨端線にも大きな力として加わるために骨端軟骨の損傷が起こると考えられているのです。
また、骨端線は縦方向への牽引力に対しては耐える力を持っていますが、回旋などの動きによりズラされるような力が加わる捻転力に対しては抵抗力が低いという特徴があります。
よって肩に捻れの力が強く加わることになるカーブボールを投げると成長軟骨板軟骨が少しずつ傷つき、だんだんと炎症を起こし、最終的には成長軟骨板は疲労骨折のような状態になるわけです。
さらにオーバーユースや筋力不足、肩関節の可動域制限、体幹や下半身の柔軟性不足、肩に負担をかける投球フォームなどもリトルリーガーズショルダー発生に関係すると考えられています。
リトルリーガーズショルダーの分類
リトルリーガーズショルダーはソルターハリスの分類のType1損傷と考えられ、骨端線の部分の広がりの度合いによって次の3つに分類されます。
Ⅰ型:骨端線の外側が部分的に拡大している
Ⅱ型:骨端線が全周にわたり拡大している
Ⅲ型:骨端線の滑りを伴う
リトルリーガーズショルダーになると
投球時や投球後の痛み、肩を捻ると痛みが出るなどの症状が主訴となります。
しかし、痛みを感じる場所や投球動作のどの部分で痛みを感じるのかはまちまちです。
また、上腕の一番上の頭の部分にある大結節という出っ張りの少し下辺りに圧痛が出たり、患者さんに腕を捻ってもらい、その腕に術者が手で抵抗を加えたりすると痛みが出ます。
リトルリーガーズショルダーになったら
リトルリーガーズショルダーは、投球や肩に負担のかかるような動作は約3ヶ月程度禁止し、理学所見やレントゲンで骨端線が安定していると思われる場合は安静期間の3か月後に軽いキャッチボールから始めていきます。
また、必要であれば4週間後からは関節可動域訓練を行い、スポーツへの完全復帰までは早くても6ヶ月、長ければ1年以上かかることもあります。
(進行期のものなら5か月、すべりを生じた終末期では6か月以上の修復期間が必要となり、その場合は再発することも多いようです)
リトルリーガーズショルダーのリハビリ
リトルリーガーズショルダーは、発症の一因として体や手足の柔軟性が低下していることが多いのでストレッチにて柔軟性を向上させたり、投球動作に必要な筋肉の筋力トレーニングも行ったりします。
投球フォームが肩に負担をかけている場合や、回復させるために行っているストレッチまたは筋力トレーニングが自分の体の状態に合っていない場合はその修正を行います。
リトルリーガーズショルダーは、患部の安静やストレッチ、筋力トレーニング、投球フォームの修正などを正しく行えば改善される場合がほとんどです。
それらを改善することで再発を防ぐことも出来ます。
リトルリーガーズショルダーは、早期発見や早期の治療開始、原因を探り改善していくことが大切になってきます。
6.上腕骨近位骨端線離開
骨端線とは
成長期の骨の両端には骨端線(骨端軟骨)という成長軟骨板があり、この部分で骨は成長していきます。
その骨端線部分は骨の間に存在するのですが、急激に骨が伸びる時期になると骨端線部分での結合力が弱くなっています。
上腕骨近位骨端線離解とは
上腕骨近位骨端線離解とは、手を後ろに着いた時などの外力により上腕骨に捻るような力が加わることで、骨端線部分を中心として幅が広がったりずれたりする状態です。
骨端線離開はその離開の状態を表すのにSalter-Harris分類がよく使われます。
Salter-Harris分類
Type1:骨端線の部分での離開
Type2:骨折線は骨端線を通過し、骨幹端に三角形の骨片が見られる最も多いタイプ
Type3:骨折線が骨端から骨端線を通り再び骨端に繋がる骨折
Type4:骨折線が骨端から骨端線を通過し、骨幹へと走るタイプ
Type5:骨端線を上下から圧縮するような力が加わり骨端線が潰れてしまう骨折
上腕骨近位骨端線離開が発生するとき
上腕骨近位骨端線離解は外傷性の場合、身体の後ろ側へ前を向いたままで倒れる時に、上腕を体幹に近づけながら腰や背中の方向に腕がある状態で手を着くような形になった時に発生することが多いです。
損傷した骨端はそこに付いている筋肉の影響を受け後内方へ引っ張られて転移します。
上腕骨近位骨端線離解の分類
Neer-Horwitz分類
1度:5mm未満の転移
2度:骨幹の幅の1/3まで
3度:骨幹の幅の2/3まで
4度:2/3を超すものや完全転移
上腕骨近位骨端線離解になると
上腕骨近位骨端線離開になると外傷による骨端線理解の場合は、上腕の近位部が腫れ、その辺りの痛みは強くはっきりしていて腕を動かさず反対の手で肘を支えるようなポジションを取ることが多くなります。
また、繰り返す投球動作により発生するリトルリーガーズショルダーは、投球時や投球後の痛み、肩を捻ると痛みが出るという状態が主訴となります。
痛みを感じる場所や投球動作のどの部分で痛みを訴えるのかはまちまちです。
上腕の一番上の頭の部分にある大結節という出っ張りの少し下辺りを押すと痛みが出たり、患者さんに腕を捻ってもらい、その腕に術者が手で抵抗を加えたりすると痛みが出ます。
上腕骨近位骨端線離解を回復させるには
外傷性の上腕骨骨端線離開は基本的に保存療法となります。
Neer-Horwitz分類のⅠ度あるいはⅡ度では三角巾などによる安静固定を
2~3週間行います。
Ⅲ度で20°以上の屈曲変形がある時には徒手整復を行い、Ⅳ度では最大挙上位での整復後に1~2週間のゼロポジション牽引を行います。
疲労骨折や骨端線損傷、腱板など軟部組織の損傷や炎症など肩には様々な種類の障害が存在します。
それらは障害の種類や程度により回復方法や回復の限界はそれぞれ違ってきます。
7.肩関節不安定症
肩関節は
鎖骨、肩甲骨、上腕骨頭構成され、腕の骨の一番上の部分の丸くなっているところ(上腕骨頭)と肩甲骨の外側にある小さなお皿のような部分(関節窩)で作られる球関節です。人間のすべての関節(31関節)の中で動かせる範囲が最も広い関節です。
肩甲骨関節窩の形態や、関節包、関節唇、関節上腕靭帯、上腕二頭筋長頭筋腱、腱板(棘上筋・棘下筋・小円筋・肩甲下筋)といった周囲の軟部組織により補強され安定性を高めています。
この肩の関節部分で安定感が損なわれ肩関節がゆるい状態になってしまっていることを、肩関節不安定症といいます。
肩関節不安定症の分類
肩関節不安定症は外傷により起こる不安定症と、非外傷の不安定症に分類されます。
外傷性肩関節不安定症
スポーツでの接触や転倒、転落などにより脱臼や亜脱臼を起こした時に、関節唇や靭帯、関節包が損傷されて関節の安定性が損なわれたもの。
非外傷性肩関節不安定症
外傷とは関係なく、関節包や靭帯などの軟部組織が先天的または後天的に緩くなっていて、肩関節部分で安定性がなくなり不安定になっている状態。
非外傷性肩関節不安定症は、肩関節疾患の中の3~4%で、10~20歳代の女性に多い傾向があります。
原因ははっきりしていませんが、全身の関節弛緩、肩関節の形成不全など、構造的な問題または肩周りの筋力低下などが考えられます。
また、非外傷性肩関節不安定症は、その状態により以下の4つの病態に分類されます。
1)動揺性肩関節
肩関節に多方向にわたる不安定性があり、全身疾患や発症に関して明らかな外傷が関与していないもの。(非外傷性肩関節不安定症の76.3%を占めるそうです)
2)随意性脱臼
脱臼あるいは亜脱臼を本人の意思によりさせることができるもの。(非外傷性肩関節不安定症の12.7%を占めるそうです)
3)習慣性脱臼
本人の意思にかかわらず特定の肩関節姿位で脱臼あるいは亜脱臼をおこすもの。もっとも多いのは80~100度前方に腕を上げた肢位で後方亜脱臼を起こすタイプです。(非外傷性肩関節不安定症の10.4%を占めるそうです)
4)持続性肩関節亜脱臼
肩関節は常に前方亜脱臼位をとっていて、徒手整復は可能であるが整復位の保持ができないもの。(非外傷性肩関節不安定症のわずか0.6%)
肩関節不安定症になると
普段は何も感じないこともありますが、スポーツ時や重たい物を持って負担がかかったときなどに、肩の痛みやだるさ、抜けそうな感じが出てきます。
スポーツ時や寝返りを打った際などに、肩が外れてしまうこともあります。
肩関節不安定症を疑うときは
先ずはどのような状態になると肩の不安定感や脱臼感、痛みを感じるのかを詳しく聞きます。
そして、
腕を身体の真横へ水平になるまで上げ、肘を90度に曲げ指先が上を向くような状態からボールを投げるように腕を後ろへ引くと脱臼しそうな感覚があるかどうか。
力を抜いた状態の腕を真下に引いたりすると肩甲骨の先端と上腕の頂上との間に明らかな隙間が出来るかどうか。
などの徒手検査を行います。
そして、肩関節不安定症を疑い必要であればレントゲン撮影、CTやMRIなどの画像診断が行われます。
レントゲン撮影の際は、両手に重りを持って肩関節を撮影することにより、肩関節の緩さがよく分かります。
CTは骨の状態確認、MRIは軟部組織損傷の有無の確認に適しています。
肩関節不安定症を回復させるには
疼痛や脱臼または亜脱臼による日常生活動作やスポーツ活動の障害が著明でなければ、少なくとも1年くらいは保存療法にて経過を観察していきます。
保存療法では、肩関節安定性改善のために腱板を構成する筋肉を中心とした筋力強化や日常生活動作の指導、スポーツ活動での注意や指導などを行っていきます。
十分な経過観察を行った後に痛みなどの症状、生活上の苦痛の改善が期待できないような場合や、軟部組織の損傷が大きく反復性脱臼のように何度も脱臼を繰り返してしまう場合には、手術療法が適応されます。
肩関節不安定症は、原因により治療法が異なってきます。
不安定感はどこからきているのかをしっかりと見極め治療に当たることが重要です。
8.肩甲上神経麻痺
肩甲上神経麻痺:肩を動かしづらい、肩周囲に痛みを感じる、肩周りの筋肉が痩せてきた、肩を大きく動かすスポーツでのスポーツ障害など
肩甲上神経とは
肩甲上神経(C5-6)は、背中にある肩甲骨の上部にある棘上筋と下部の棘下筋を支配する神経です。
肩甲上神経は、頚椎から出た神経が複雑に入り組んで出来る腕神経叢の上神経幹から起こり、首と肩関節の間あたり(よく肩がこると言って押さえるあたり)を通り、その後ろにある肩甲骨の上部中央付近に出てきます。
そして、肩甲切痕と上肩甲横靭帯の間を通過し、肩関節に関節枝、棘上筋に運動枝を出し、肩甲棘の外側から肩甲棘下に回り込み、肩甲棘基部外側迂回部で棘窩切痕と下肩甲横靭帯の間を通過し、棘下筋に運動枝を分布します。
肩甲上神経麻痺とは
肩甲上神経麻痺とは、肩甲骨上部にある肩甲切痕部やその後方にある肩甲棘基部外側迂回部という部位で肩甲上神経が圧迫されることなどにより引き起こされる神経障害です。
神経が圧迫される原因としては、ガングリオンや周辺組織(靭帯や関節包)などによるものが多いようです。
他にも、骨の棘(骨棘)により圧迫されたり、バレーボールや野球のように腕を上げることを繰り返すスポーツで神経自体が牽引されたりして損傷するなどケースもあります。
肩甲上神経麻痺になると
肩甲上神経麻痺になると肩が重い感じがする、腕が水平以上あげられない、肩周りのしびれ感、肩周りの違和感、肩周りの筋肉が痩せてくる(筋委縮)などの症状が出てきます。
また、肩甲上神経麻痺は圧迫を受ける部位(肩甲切痕部、肩甲棘基部外側迂回部)により症状が現われる場所が異なります。
・肩甲切痕部で圧迫を受けた場合
棘上筋と棘下筋の筋力低下や萎縮がみられます。肩の外転や外旋がしにくくなったり、肩関節周りに痛みが生じたりします。
・肩甲棘基部外側迂回部で圧迫を受けた場合
棘下筋にのみ症状が出ます。棘下筋が障害を受けると、下垂位での肩関節外旋の筋力低下が起こります。
肩甲上神経麻痺を回復させるには
神経の牽引や圧迫が原因である場合は、安静や筋緊張の緩和など保存的に回復させていくのが基本となります。
特に神経を圧迫している可能性のある部位の周りの筋緊張を緩和し、神経の圧迫が取り除けるようにしていくことが重要です。
ガングリオンが原因で圧迫を受けている場合は、穿刺によってガングリオンを潰したりすることもあります。
筋肉の委縮に対しては、EMSという電気治療なども有効です。
保存的に経過をみても回復しない場合には、神経を圧迫している原因を取り除く手術が行われることもあります。
肩甲上神経麻痺は、腕を外側へ挙げられなかったり肩周囲に痛みを感じたりする場合に疑われる疾患の一つになりますが、肩の腱板損傷との見極めも必要です。
見極めには鍼筋電図検査をしてくれる医療機関がおすすめです。
また、ガングリオンを疑う場合や腱板損傷との見極めにはMRI検査が有用です。
肩周りの痛みや違和感などの原因には様々なものがあります。
原因を特定しない事には回復は望めませんので、気になる症状がある方は、ぜひ一度当院へご相談ください。
9.長胸神経麻痺
長胸神経とは
首の第5頚神経から第8頚神経と第1胸神経が叢(くさむら)のように複雑に交叉している部分を腕神経叢と呼びます。
長胸神経は、その腕神経叢の中の第5頚神経(C5)、第6頚神経(C6) 、第7頚神経(C7)の枝から構成される神経です。(第4頚神経が長胸神経に含まれる方もいます)
腕神経叢から枝分かれし構成された長胸神経は鎖骨の内側1/3辺りの下を通って胸の側面を下行し、前鋸筋といわれる筋肉を支配しています。
この前鋸筋は、肋骨の前側面から肩甲骨に付いている筋肉で、肩甲骨を体幹に引き寄せて安定させる働きをします。
長胸神経麻痺とは
長胸神経は中斜角筋を貫通し、浅い位置を走行するといった特徴があるため、引き伸ばす力や圧迫などの外力によって障害を受けやすくなっています。
そして何らかの原因により長胸神経が障害されることで前鋸筋の麻痺や、肩甲骨周りの痛みや違和感、腕の挙上困難などを訴える疾患です。中でも前鋸筋の麻痺により肩甲骨が天使の羽根のように浮き上がってしまう翼状肩甲は特徴的な症状です。
また、長胸神経が障害を受けやすい場所としては、中斜角筋貫通部、肋鎖間隙の通過部、第2肋骨の外側縁部などがあります。
(長胸神経を構成するC5~C7頚神経の枝のうちC5とC6の枝は中斜角筋を貫通することが多く、特にC5の枝は60%も貫通しているとの報告があります。一方C7の枝が貫通することはないようです)
障害を受ける原因としては
・神経の通り道がリュックサックの紐などで圧迫を受けた時
・テニスのサーブやゴルフのクラブスイングのようなスポーツによる神経の引っ張り
・転倒した際に、腕を広げた状態で脇を強打する
・産褥期に腕を上げたまま横向きで新生児との添い寝をしたときに伸張されるなどです。
長胸神経麻痺になると
初期のころは、肩甲骨周囲の脱力感や鈍痛を感じるようになります。
徐々に腕を前から上に挙げるときに力が入りにくくなり、肩甲骨の内側が浮くようになってきます。
これが長胸神経に支配されている前鋸筋が機能不全を起こす翼状肩甲という状態です。
重症例では、腕を上げる動きが出来なくなってしまうこともあります。
ただし、翼状肩甲は肩甲骨の固定性が落ちているための症状ですから、僧帽筋の麻痺などによっても引き起こされるので鑑別が必要です。
長胸神経麻痺を回復させるには
基本は患部にかかる負担や原因を取り除いて経過を見ていきます。
完全に切れてしまっているなど、よほどの重度損傷でない限り神経麻痺は回復することが多いです。
しかし、回復には個人差があり、すぐに回復する場合もあれば回復までに1年以上時間を要する場合もあります。
その間は、肩甲骨や肩周りの筋力強化などを行いながら根気よく待ちます。
長胸神経麻痺は、肩を動かしにくい、腕を上げにくい、肩甲骨が浮き出てきたなどを感じる場合に疑うべき疾患の一つになります。
10.腋窩神経麻痺
腋窩神経とは
人の〝せぼね〟である脊椎からは、筋肉を動かしたり皮膚の感覚を脳へ伝えたりする脊髄神経が左右に出ています。
その脊髄神経のうち、頚部から出る8対は頚神経と呼ばれ、頚椎から出た頚神経はそれぞれ分かれて枝を出し、分かれた枝が別の枝と合流することで頚神経叢や腕神経叢が作られます。
腋窩神経は、主に第5第6頚神経が元となる神経で、腕神経叢から分かれたのち後束を経て、枝分かれした神経です。
腋窩神経は後上腕動脈とともに、上腕骨内縁、上腕三頭筋長頭、小円筋、大円筋で作られるクワドリラテラルスペース(Quadrilateral space)を身体の前面より後方へと通り抜けます。
そして小円筋に枝を出したのちに、三角筋を動かす枝と肩の外側の皮膚の感覚を司る上外側上腕皮神経になります。
腋窩神経麻痺とは
腋窩神経麻痺は、クワドリラテラルスペースで腋窩神経が圧迫されたり筋肉に腋窩神経が締め付けられたりすることで起こります。
腋窩神経麻痺の原因
圧迫や締め付けられる原因としては、肩を打つなどの外傷にてクワドリラテラルスペース部分に発生した内出血による圧迫
松葉づえをつく時に、わきの部分で体重を支えることにより起こる圧迫
何らかの原因により筋肉が硬くなることによる圧迫や締め付け
これらにより腋窩神経が圧迫や締め付けを受けることで腋窩神経麻痺は起こりますが、肩関節脱臼などの外傷により起こることもあります。
腋窩神経麻痺が発生すると
腋下神経は、三角筋を支配しているため、麻痺が起こると上腕を体の横方向へ上げる外転運動と腕を外側に捻る外旋運動が困難になり、三角筋が萎縮してしまうこともあります。
また、肩の外側の感覚が低下したりします。
腋窩神経麻痺を疑うときは
どのような状況で麻痺が発生したのかを確認し、肩外側を触れてみた時の感覚が鈍っていないか、腕を身体の外側に上げたり外側に捻ったりすることが出来るか、三角筋の萎縮がないかなどを見ることで判断をしていきます。
また筋電図検査を行なったり、腱板断裂などの合併の有無を確認するためにMRIやエコーなどを行なったりすることもあります。
リハビリとしては
リハビリとしては、三角筋の萎縮により落ちてしまった筋力を回復させるための運動を行っていきます。
また、クワドリラテラルスペースを構成する筋肉の筋緊張が強い時などは、手技を用いて筋緊張を緩めていくことも有効です。
腋下神経麻痺は、問題がなければ2~3ヶ月経過で回復していくことが多いです。
スポーツで肩をよく使う方や肩を強打した方などで、腕が上がらない、肩の外側の感覚がおかしいなどの症状がある場合は、腋窩神経麻痺の可能性もあります。そのような時は、腱板を痛めた場合や肩関節脱臼などの合併も合わせて考えなければいけません。
11.肩鎖関節脱臼
肩鎖関節とは
肩鎖関節は、肩の関節の一番外側の上の位置、肩甲骨の肩峰という部位と鎖骨の外端とで作られた関節です。
この関節は、肩鎖靭帯(肩甲骨の肩峰と鎖骨)と烏口鎖骨靭帯(肩甲骨の烏口突起と鎖骨)により連結・補強されています。
さらに三角筋と僧帽筋により補強され、安定性が保たれています。
肩鎖関節脱臼とは
肩鎖脱臼は、柔道・レスリング・ラグビー・アメフトなどのコンタクトスポーツや、自転車事故、作業中の転倒や転落などで、肩の外側を強く打ちつけることにより発症します。
肩鎖関節に強い外力が加わることにより、関節に大きな負荷がかかり靭帯や筋肉が損傷して脱臼が生じるのです。
その多くは、鎖骨が上方へ浮いてしまうような脱臼となります。
肩鎖関節脱臼の分類
肩鎖関節脱臼は、関節のずれの程度・方向により捻挫、亜脱臼、脱臼に分類されます。(Rockwoodの分類)
- Ⅰ型(捻挫)
肩鎖靱帯が部分的に傷んだ状態で、烏口鎖骨靱帯は正常でX線でも異常はありません。
- Ⅱ型(亜脱臼)
肩鎖靱帯が断裂し、烏口鎖骨靱帯は部分的に傷んでいます。X線では関節の隙間が拡大し鎖骨の端がやや上方に浮いた状態となります。
- Ⅲ型(脱臼)
肩鎖靱帯、烏口鎖骨靱帯ともに断裂しています。X線では鎖骨の端が完全に上方へと浮いてしまっています。
- Ⅳ型(後方脱臼)
肩鎖靱帯、烏口鎖骨靱帯ともに断裂し、鎖骨の端が後ろにずれてしまう脱臼です。
- Ⅴ型(高度脱臼)
Ⅲ型の程度の強いものです。肩鎖靱帯、烏口鎖骨靱帯ともに断裂し、正常な烏口突起と鎖骨との距離の2倍以上の広さにずれてしまう脱臼です。
- Ⅵ型(下方脱臼)
鎖骨の下方脱臼。鎖骨の端が烏口突起の下に潜り込む非常にまれな脱臼です。
症状としては
初期の場合どのタイプであっても肩鎖関節の安静時の痛み、肩鎖関節の圧痛、運動時の激しい痛み、腫れなどが見られます。
Ⅲ型になると、見た目にも鎖骨が上方へ浮き上がっているのが分かり、浮き上がっている端を上から押すとピアノの鍵盤のように上下に動くことが確認できます。(ピアノキーサイン)
肩鎖関節脱臼を疑うときは
先ずはケガをした時の状態を詳しく聞き、押して痛む個所や腫れのある個所、肩の運動にてどのあたりに痛みが出るのかなどをみていきます。
そして肩関節の上方に痛みがある場合は。鎖骨の中央や内側を押し込んだりつまんで上下に動かしたりすることで、肩鎖関節や鎖骨外端に痛みが出るかの確認。上腕骨の中央部を持ち上腕骨の上部がたわむような力を加えるなどの介達痛を見ていくことで、鎖骨骨折や上腕骨骨折など骨の損傷がないかをチェックします。
さらにペインフルアークサインやヤーガソンテストなどを行い、腱板損傷や上腕二頭筋腱などを痛めていないかのチェックも行います。骨の損傷はレントゲンで確認できますが、レントゲンでは腱や靭帯を痛めてることは分かりづらいため、軟部組織損傷を見逃すとのちのリハビリ期間が変わってしまいます。
最終的にはレントゲン写真にて左右の肩鎖関節の状態の確認を行います。
その際、立位で5kgほどのウエイトを持って撮影することにより、脱臼はより明らかになります。
治療としては
Ⅰ型及びⅡ型では三角巾やテーピングなどの固定による保存療法とリハビリを行います。
特に鎖骨が浮いてしまうといった状況は、腕の重さにより肩甲骨が下へ下がってしまうことが関係しますから、三角筋でうでを吊り、腕の重さが肩鎖関節にかからないようにすることは重要です。保存療法の場合2~3か月は運動を禁止します。
Ⅲ型については、年齢や仕事、日常生活の違いを考慮した上で、保存療法か手術療法かを選択することになります。事務職などの力仕事や肩を大きく動かすことが少ない職業でしたら手術はなし。力仕事や肩を大きく動かすような仕事でしたら手術を行うというような判断を行います。
Ⅳ型・Ⅴ型・Ⅵ型の完全脱臼には手術が必要になってきます。
なお肩鎖関節脱臼を受傷してしまったら、治療方法に関わらず回復後は肩周りの筋肉の強化は重要となります。
肩鎖関節脱臼の注意点
肩鎖関節脱臼は、鎖骨外側端の骨折や上腕骨の大結節骨折、腱板損傷などとよく間違われるために見極めが大切です。
また、治療せずに肩鎖関節が脱臼したままの状態で生活したり、スポーツを続けたりしていると後遺症に悩まされることもあります。
肩鎖関節脱臼治療終了後によくある問題は
- 美容上の問題
脱臼した鎖骨の突出により、鎖骨の外側が出るような服装をし辛くなる。
- 肩の筋力の軽度低下や不安感
日常生活で不便を感じるほどの筋力低下は少ないですが、スポーツレベルでの筋力低下、重量物を持ち上げるときに不安感を感じるなど
- 肩鎖関節部の痛み
脱臼している部分の異常な動きにより痛みが残存することもあります。
外傷により肩周辺を痛め、その痛みが強い場合は三角巾でうでを吊り、痛みの場所を冷やすなどの応急処置を行って下さい。
肩鎖関節脱臼の初期対応や術後のリハビリは、ぜひ当院にお任せください!
12.肩関節脱臼
肩関節は、鎖骨、肩甲骨、上腕骨頭構成され、腕の骨の一番上の部分の丸くなっているところ(上腕骨頭)と肩甲骨の外側にある小さなお皿のような部分(関節窩)で作られる球関節です。人間のすべての関節(31関節)の中で動かせる範囲が最も広い関節です。
肩関節脱臼とは
膝や腰、股関節などであれば骨同士の接する範囲が広かったり、片方の骨のくぼみにもう片方の丸い部分がはまったりして安定しているのですが、動きに制限がかかるということになります。
それに対して肩関節は、骨同士の接する範囲が狭いために、動かせる範囲は広く非常に複雑な動きが可能ですが、その反面、不安定な関節となるため外れたりズレたりしやすい関節となるのです。
その安定性のない肩関節は、関節包、関節唇、関節上腕靭帯、上腕二頭筋長頭筋腱、腱板(棘上筋・棘下筋・小円筋・肩甲下筋)といった軟部組織により補強され安定性をもたらされています。
それらが手を上げている時や下している時など、腕の肢位により働く軟部組織を変えながら肩関節を安定させているのです。
そして、軟部組織であるがゆえに柔軟性があり動く範囲を獲得できるのです。
しかし、軟部組織による補強部分は強い力が加わると痛んだり切れたりします。肩関節に強い力が加わることで関節唇や靭帯、関節包が損傷し上腕骨頭が正常な位置から外れてしまうことが肩関節脱臼となります。
肩関節脱臼の特徴
肩関節脱臼の種類は、前方脱臼・上方脱臼・後方脱臼・下方脱臼の四種類が有りますが、圧倒的に多いのが肩関節脱臼の約95%以上を占める前方脱臼です。
脱臼方向による特徴
前方脱臼では、上腕が体の前・外方向(前外側)に離れ、後方脱臼では、上腕は少し体から離れる程度または身体に付いた状態で、腕全体は内側に捻るかたち(内旋位)になっています。また前方脱臼では肩峰という肩関節の1番外側にある出っ張りの下がへこみます。
下方脱臼では腕を横に挙げた状態で、下には下がりません。腕を上に上げた状態になることもあります。
上方脱臼は、ほとんどの場合、腱板損傷を伴う脱臼です。
これらはすべて上腕骨頭が移動する位置により、腕の上がり具合や捻り具合が変わり、いずれの場合も腕は固定され(ロッキング)動かすことは厳しい状態となります。
また、全脱臼の中でも肩関節脱臼が50%を占めます。
肩関節をはじめて脱臼する時、健康な関節でしたらよほどの強い外力が加わらなければ簡単には脱臼しません。
しかし、初回の脱臼時に肩関節を安定させる骨、軟骨、靱帯、関節包、腱の損傷や摩耗が起きているために2回目は、初回よりも弱い外力でも脱臼を起こすことになります。
この2回目の脱臼は50%(若年者のみなら66%~94%)の人に起こるとされ、特に脱力時に外力が加わるとよく外れます。
肩関節を安定させる関節包の厚くなっている部分である下関節上腕靭帯の破綻が関節窩側で起こるものは、バンカートリージョンやバンカート損傷と言われています。このバンカートリージョンは初回脱臼時のほとんどに見られ、バンカートリージョンは関節の安定性を大きく損なうために、最近ではバンカートリージョンが確認されると関節鏡での修復がよく行われます。
さらにこの傾向は脱臼を重ねるごとに顕著になり反復性(習慣性)脱臼と言われる状態になります。
受傷原因としては
転倒や転落により手や肘を地面に着くことで、間接的に肩へと衝撃が伝わることで脱臼をすることが多いです。
肩関節脱臼を発生しやすいスポーツとしては
ラグビーやアメリカンフットボール、柔道などのコンタクトスポーツ、スキーやスノーボードによる転倒など、強い力や捻る動作が肩関節に加わることが多いスポーツでよく発生します。
交通事故による脱臼も多いです。
症状としては
脱臼直後に激しい肩の痛みがあり、脱臼した上腕骨頭がずれる方向によって腕は特徴的な位置に固定され動かすことが出来なくなります。
また、肩や腕、指などにしびれが生じることもあります。
肩関節脱臼が発生したら
受傷状況を確認し、骨折や神経損傷などの合併損傷の有無や、ロッキングされた腕の肢位や骨頭の位置などをみて脱臼方向の判断をつけます。
レントゲン、CTなどがあればそれらを使って確認を行います。出来れば関節唇の損傷状態を確認するためにMRIも行います。
肩関節脱臼の合併症や合併障害として
腱板や関節唇などの軟部組織の損傷、骨折、血行障害や神経損傷を伴うこともあるので、手指を触った時の感覚や、肘や手指を曲げ伸ばしできるかなどの確認が必要です。
また軟部組織損傷としては腱板を損傷や断裂をしていることが多いために、脱臼の時点でも患者さんに伝えておくことが大切です。
治療としては
脱臼の整復後に肘を曲げ、三角筋で吊る形で前腕を胸に付け3週間程度の固定をすることが多いのですが、約50%(若年者66%~94%)の方は再発します。
しかし最近では外旋位固定と言って肘を曲げ腕は外側へ向ける前へならえの形で固定すると再脱臼をする確率が19.7%(若年者27.8%)前後まで下がると言われています。
よって全員が手術をした方が良いとは言えないようです。
肩関節脱臼は年齢や筋力、肩関節の安定性、さらには今後どのような生活や運動を行っていくかによって再脱臼の確率は変わってきますが、初回脱臼の時には手術はしないことが多いと思います。
初回で手術をするケースは運動選手でしっかりとした肩関節の安定性が必要な方がそれにあたると思います。
2回目以降で何度も脱臼を起こす場合は手術を考える必要があります。
肩の痛み、腕が上がらないなど肩に関するお悩みは、ぜひ当院にご相談ください!
大阪市住吉区西長居3-1-33
藤田鍼灸整骨院
藤田勝也
06-6698-4568
参考文献
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