コンパートメント症候群-手足のしびれ・手足の痛み・筋肉の痛み

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コンパートメント症候群:手足のしびれ、手足の痛み、筋肉の痛み、筋肉の腫れ、外傷やスポーツでのオーバーユースによる循環障害や阻血、組織の壊死や神経麻痺

 

コンパートメントとは

 

筋肉は筋繊維(きんせんい)という細い筋細胞のいくつかを筋周膜と呼ばれるもので包み、その筋周膜で包んだ筋繊維の束は筋繊維束と呼ばれます。

そしていくつかの筋繊維束を筋上膜で束ねたものが一般的に筋肉と呼ばれる骨格筋であり、骨格筋1つ1つの中には血管や神経が通っています。

骨格筋の断面、筋上膜、筋繊維束、筋周膜、筋繊維|大阪市住吉区長居藤田鍼灸整骨院

骨格筋の構造

私たちの腕や足などの縦に長く走る筋肉がある個所には筋肉だけではなく骨や骨間靭帯が存在し隣接しています。

筋肉はそれらの隣接する骨や骨間靭帯に筒状に包まれる形で区分けされており、その区分けされた1つ1つの区画は筋区画(コンパートメント)と呼ばれます。

 

コンパートメント症候群とは

 

コンパートメント症候群とは骨折や強い打撲などによる筋肉や血管の損傷や運動により、その筋区画内の圧力が高まった場合に、限られたスペースである筋区画にある神経や血管がその圧力により圧迫されることで起こる障害です。

障害が発生すると触った感覚が鈍くなったり痛みが出たり、筋力が低下したりします。

コンパートメント症候群は、主に四肢の障害であり下腿や前腕によく発生しますが、特に発生するのは下腿です。(その他腹筋などでも起こります)

 

下腿のコンパートメント症候群の場合

 

次の図は下腿を地面と水平に切った場合に上から見たところですが、下腿というスペースの中を脛骨や腓骨といった骨や筋肉、それに神経や血管が隣接して通っており、その骨や筋肉、神経や血管を下腿ではこのように筋区画=コンパートメントとしています。

その下腿のコンパートメントは前方、外側、浅後部、深後部の4つに分けられます。

 

コンパートメント症候群―下腿の筋区画と神経、血管|大阪市住吉区長居藤田鍼灸整骨院

コンパートメント症候群ー下腿の筋区画 参照:最新整形外科学大系

そして、そのコンパートメントがケガや運動により内圧が上がることで神経や血管が圧迫され障害を起こすコンパートメント症候群となると、その障害されたコンパートメントにより次のような症状が引き起こされます。

 

・前方コンパートメント:最も頻度が高く、痛み、腫れ、下腿前外側を押すと痛む圧痛があり、深腓骨神経領域の母趾と第2趾間の知覚低下、足関節背屈の筋力低下があり、下腿の前部を伸ばすように足先を下に向けると足関節と足趾に痛みが出ます。

 

・外側コンパートメント:圧痛は外側にあり、浅腓骨神経領域である下腿外側の知覚障害、足の裏を外側に向けるようにする(外返し)力の低下、足の裏を内側に向けると下腿の外側に痛みが出ます。

 

・浅後部コンパートメント:ふくらはぎに圧痛があり、下腿の外側の下方や足部の外側の知覚障害、足関節背屈の筋力低下、足関節を背屈しふくらはぎを伸ばすようにするとふくらはぎに痛みが出ます。

 

・深後部コンパートメント:圧痛は下腿内側にあり、足の裏の内側の知覚障害が見られ、足首を下に向ける筋力や足趾を反らす筋力の低下、足趾を反らすような動きでは痛みが出ます。

 

コンパートメント症候群の特徴

 

コンパートメント症候群には急性型と慢性型があり、急性型は場合によっては筋や神経の組織が壊死して重大な障害を残すこともあります。

急性型はラグビーや柔道などのコンタクトスポーツの外傷後またはギプス固定などでも発症し、慢性型は普通にスポーツをしていても発症することがあります。

下腿のケガをして、筋肉内での出血や腫脹などがあった場合は、完治するまで足の感覚やストレッチによる痛みの出方、筋力低下などがないかを念頭に置き観察していく必要があります。

また外傷後にギプスを巻いた場合の初期は、ケガをしたところがまだまだ腫れたり出血したりすることがあり、その場合、ギプスを巻いていると腫れや出血による筋肉の体積の増加は外側へと膨れ上がることが出来ません。

すると外に膨れることが出来ない分、限られたスペースの内圧は上がることになりコンパートメント症候群が発生します。

よってギプスを巻いた初期は特にギプスがきつすぎないか、きつさが増していないか、足先がしびれないか、感覚は正常か、足先の血色は正常かなどのチェックは必須です。

 

急性型の初期の症状としては疼痛、腫脹、感覚障害、運動障害などがあります。また問題のコンパートメントがある筋肉群をストレッチするように伸ばすと強い疼痛が発生するのが特徴的な症状です。

 

慢性型はスポーツをすると痛みやこわばり感が出て安静時には無くなることが特徴です。

慢性型は急性型に比べると緩やかな症状ですが、適切な処置を行わなければ次第にレベルの高いスポーツを続けることが難しくなります。

 

またコンパートメント症候群は、薬物や咬傷、火傷などでも出ることがあるようですから注意が必要です。

 

コンパートメント症候群の対応としては

 

通常、筋肉をケガした時には応急処置として、安静、冷却、圧迫、挙上を行うことで内出血や腫脹を防ぎます。

しかし、手足にしびれや痛み、血行障害を生じた場合は急性型のコンパートメント症候群を疑わなければなりません。

急性型のコンパートメント症候群を疑う場合には、内圧を測定できる医療機関で調べてもらえればいいのですが、処置が遅れれば筋肉壊死や神経麻痺を起こしてしまいます。

急性のコンパートメント症候群と言われるような状態は、始まると急速にひどくなることも多いです。

よって疑われる症状が消失せずに筋区画内圧が40mmHg以上であれば出来るだけ早く筋膜切開(減張切開)を行う必要があります。

 

慢性型の場合は保存療法としてストレッチやテーピングを行いますが、症状が改善しなかったり、運動再開とともに再発を繰り返したりする場合には、筋膜切開を行うこともあります。

急性型でも慢性型でも切開を行うと術後の成績はよく、競技レベルでのスポーツ復帰も可能なので専門医とよく相談し、しっかりと経過を見て頂き正しい判断をしてもらいましょう。

 

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参考文献

内藤 正俊(2007)『下腿コンパートメント症候群』最新整形外科学大系.中山書店.

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