首下がり症候群とは、何らかの原因により座位,安静立位時に体幹に対して頭部が異常に前屈し、首が下がってしまう症状のことをいいます。
随意的に伸展し修正が可能なこともありますが長続きしません。
初期の頃には、背臥位にすると前屈が消失して正常頭位となります。
骨変形(脊柱癒合など)を一次性に認める場合は、首下がり症候群とは言いません。
症状としては
部が前屈することにより視界が障害されたり、歩行、呼吸や嚥下がしづらかったりなど日常生活に大きな困難を与える
首下がりの直接的な原因は
- 頭を支える首の後側の筋肉(頚部伸筋群)の筋力低下・機能不全、
- 首の前側の筋肉(頚部屈筋群)の過緊張があります。
後頚筋の筋力低下は筋委縮性側索硬化症、重症筋無力症、多発性筋炎などにより、前頚筋の過剰緊張は多系統萎縮症、パーキンソン病などによって引き起こされます。
その他、脳梗塞、脊髄小脳変性症、頚椎症、頚髄症、ミオパチー、ポリオ後筋委縮症候群、甲状腺機能低下症、慢性炎症性脱髄性ニューロパチー、皮膚筋炎、封入体筋炎、筋緊張性ジストロフィー、顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー、カルチニン欠乏症、甲状腺機能低下症、甲状腺機能亢進症、副甲状腺機能亢進症、クッシング症候群などによっても首下がりをきたします。
また、原因薬物としては、ドーパミン作動薬(パーキンソン病の薬)やDPP-4阻害薬(血糖値を下げる薬)なども知られています。
診断は
診・身体所見・臨床検査を行います。
・問診
発症年齢や発症様式、日内変動や疲労現象の有無の確認、内服薬(特にドーパミン受容体刺激薬や低カリウム血症をきたす薬物やDPP-4阻害薬)の有無が重要になります。
・身体所見
錐体外路症状の有無、運動ニューロン徴候の有無、眼瞼下垂、複視、疲労性眼瞼下垂の有無、筋萎縮や筋力低下の分布、徒手筋力テストによる筋力低下の評価、ミオトニアや筋mounding現象の有無が重要になります。
・臨床検査
電解質検査や内分泌検査、筋CTや筋MRIや頚椎MRIを行います。
治療に関して
首下がりは原因となる基礎疾患の治療が必須になります。
特に神経内科的疾患の場合、内科的によく疾患を管理し調整されていることが重要となってきます。
頚椎症や頚髄症が原因となる首下がりの場合でしたら、頚椎カラーを装着し安静を中心とした薬物療法や頚部の筋力強化などの理学療法を行います。
また、患者の生活の質の向上に有益である場合は手術療法が選択されることもあります。
保存療法、観血的療法のいずれにしても、リハビリテーションがADLやQOL向上、姿勢改善に有効である場合もあります。
首下がり症候群は進行していくと、日常生活には極めて大きな問題を生じますし、原因疾患によっては加療が必要な場合もあります。
気になられる方は、お近くの専門の医療機関を受診されることが大切になってきます。
※頚部の筋肉と首下がりの詳しい関係
頚部の後屈と支持には複数の筋群が関与します。主なものには頭板状筋・頚板状筋・頭半棘筋・頚半棘筋・多裂筋です。
頭板状筋と頚板状筋の支配髄節はC2~C5で、主にはC3とC4、頭半棘筋、頚半棘筋はC5、C6が支配髄節になります。
頚部伸筋群の筋力低下に由来する首下がりは主にC3~C6髄節に支配される筋群が関わっていると考えられています。
脊柱の側にある筋群は俗に傍脊柱筋といわれ、具体的にどの筋をさすのか曖昧でありますが、頚部には脊柱起立筋に属さない傍脊柱筋が多数あります。
頚部屈曲には胸鎖乳突筋・頭長筋・頚長筋・広頚筋・舌骨筋・斜角筋などが関与し、支配髄節は副神経とC1~C8髄節に及び、主にC2~C4髄節が関与しています。
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