石灰沈着性腱板炎・石灰沈着性腱炎―肩の激痛・肩の強い痛み

大阪市住吉区長居西 藤田鍼灸整骨院

石灰沈着性腱板炎・石灰沈着性腱炎:急に起こる肩の激痛、肩の強い痛み、夜中の肩の痛み(夜間痛)、激痛で肩が動かせないなど

 

肩関節(かたかんせつ)について

 

肩関節は鎖骨(さこつ)と肩甲骨(けんこうこつ)、腕の骨である上腕骨(じょうわんこつ)で作られた関節で、人の関節の中では最も動かせる範囲の広い関節です。

肩関節は肩甲骨の関節窩(かんせつか)と上腕骨頭(じょうわんこっとう)が関節し、それを腱や関節を止め繋ぐバンドである靭帯(じんたい)、関節を止め包む関節包(かんせつほう)、筋肉が支える形で作られています。

そして肩関節を作る腱や靭帯、関節包、筋肉は骨と骨とをつなぎとめるのにゆとりをもった状態でつなぎとめています。

肩関節はそのゆとりが大きいために肩関節を動かす時に、腱や靭帯などが目いっぱい緊張するまでの広範囲を動かすことが出来るのです。

肩関節を構成、上腕骨頭、肩甲骨関節窩|藤田鍼灸整骨院

肩関節の構成(上腕骨頭、肩甲骨関節窩)

 

関節包や靭帯が腱板とともに肩関節を安定させる|藤田鍼灸整骨院

関節包や靭帯が腱板とともに肩関節を安定させる

 

腱板(けんばん)について

 

肩関節周囲には17個の筋肉があります。

その中の棘上筋(きょくじょうきん)、棘下筋(きょっかきん)、小円筋(しょうえんきん)、肩甲下筋(けんこうかきん)の4つの筋肉は合わせて腱板と呼ばれています。
腱板は回旋筋と呼ばれ、肩関節を外に捻る外旋(がいせん)、内に捻る内旋(ないせん)、肩関節を真横に上げる外転、それを身体に近づける動きである内転運動を行うことや肩関節のぐらつきを抑えるための働きをしています。

棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲下筋で腱板は作られます|大阪市住吉区長居藤田鍼灸整骨院

①棘上筋、棘下筋、小円筋、(肩甲下筋)で腱板は作られます

 

棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲下筋で腱板は作られます|大阪市住吉区長居藤田鍼灸整骨院

②(棘上筋、棘下筋、小円筋)肩甲下筋で腱板は作られます

 

石灰について

 

よく言われる石灰とはアパタイト結晶やリン酸カルシウム結晶のことです。(骨の約70%はリン酸カルシウムの一種)

そのリン酸カルシウムはハイドロキシアパタイトから出来ているために、石灰の説明を受ける場合はカルシウムやリン酸カルシウム結晶、ハイドロキシアパタイト結晶と様々な呼び名になるようです。

 

石灰沈着性腱板炎について(せっかいちんちゃくせいけんばんえん)

 

石灰が発生するとき、最初は濃厚なミルク状ですが時間と共に固まっていきます。
石灰沈着性腱板炎は、腱板に付いていた石灰が肩峰下滑液包(けんぽうかかつえきほう)という上腕骨と肩甲骨の肩峰との間にあるクッションの中へ流れ出した時に、血球がそれを貪食するときに炎症を起こすことが多いです。

また結晶そのものの成分や結晶の硬さが組織を刺激したり、大きく硬くなった石灰が腕を上げた時に上腕骨と肩峰の間に挟まったりすることで慢性的な痛みを出すものだとされています。

腱板に付いた石灰|大阪市住吉区長居藤田鍼灸整骨院

腱板に付いた石灰

 

石灰沈着性腱板炎の症状

 

石灰沈着性腱板炎のおもな症状は、肩の痛みや運動制限、夜間痛であり、夜間突然に肩の激痛で始まることも多いです。
痛みは石灰が溜まって体積を増していくことにより増してきます。
そして、石灰の成分が腱板から滑液包の下や滑液包内に破れ出ると、痛みは非常に激しくなります。

 

石灰沈着性腱板炎の特徴

 

石灰沈着性腱板炎は40~50歳代の女性に多くみられ、左肩に出やすいのか右肩に出やすいのかの差はありません。

石灰沈着は棘上筋腱(きょくじょうきんけん)棘下筋腱(きょっかきんけん)小円筋腱(しょうえんきんけん)肩甲下筋腱(けんこうかきんけん)上腕二頭筋長頭腱(じょうわんにとうきんちょうとう)など、あらゆる場所に発生しますが、棘上筋腱での石灰沈着が最も多いと言われています。

 

石灰が付くと痛みのために肩を動かすことが辛くなりますが、石灰が沈着する場所によって動かすと辛い方向は違ってきます。

また、石灰沈着性腱板炎は症状の出かたによって急性型・亜急性型・慢性型に大きく分けられます。

 

  • 急性:痛みはとても強いが長くても4週間、平均約2週間で症状は軽減する比較的若い人に起こるタイプ。
    石灰物質が腱板内から肩峰下滑液包の下や滑液包の中に入り込むことで急性症状が出やすくなります。

 

  • 亜急性:急性よりは軽い中等度の症状が1~6ヶ月ほど続きます。
    亜急性型は石灰の成分や石灰の硬さが石灰を刺激して肩峰下滑液包炎を起こし、そこに急性の強い炎症が時々出るような状態です。
石灰沈着性腱板炎の急性期型|大阪市住吉区長居藤田鍼灸整骨院

石灰沈着性腱板炎の急性型は、石灰物質が肩峰下滑液包などを刺激する

 

  • 慢性:痛みによって腕を動かせない範囲が出るようなことはありませんが、痛みを伴う運動時痛が6ヶ月以上続きます。慢性のものは腱板内にある石灰が肩峰下滑液包を刺激して炎症を起こしたり、石灰が肩峰や烏口肩峰靭帯と上腕骨頭の間に挟まれたりするインピンジメント症候群となった状態です。
    慢性型は比較的高齢の方に多くなります。
石灰沈着性腱板炎の急性期型|大阪市住吉区長居藤田鍼灸整骨院

石灰沈着性腱板炎の急性型は、石灰物質が肩峰下滑液包などを刺激する

 

石灰沈着性腱板炎を疑うとき

 

患部を押さえてみることや肩関節を動かした時の痛みの出方、痛みを感じた時の経過や日常生活での腕の使い方などを確認し判断材料とします。また、単なる腱板損傷、上腕二頭筋長頭腱炎などとの見極めも必要です。

また腕を体の側面から外側に腕を上げていくと60度から120度の範囲で痛みを感じるが、それ以上やそれ以下では痛みを感じないペインフルアークサインや、さらには腕の動きや抵抗を加えることで腱板なのか、さらにはどの筋肉が怪しいのかなどの判断もします。
何よりも石灰沈着性腱板炎の1番の特徴は夜中の激痛や、じっとしていてもうずくのかがポイントとなります。

そして、痛みの特徴や徒手によるテスト法にて石灰沈着性腱板炎が疑われたらレントゲンで石灰の確認を行います。
さらにはCTやエコー、MRIなどで沈着した石灰の位置や大きさ、腱板断裂の併発がないかなどの確認を行う場合もあります。

 

石灰があると必ず痛むのでしょうか?

 

石灰がたまる原因は不明ですが、石灰が溜まるからと言って必ずしも痛みが出るというわけではありません。
他のことでたまたま撮ったレントゲンを見た時に「石灰ありますね」となることもありますし、激しい痛みが無くなったにもかかわらず、レントゲン上では石灰がまだ残っている場合もあります。

 

石灰沈着性腱板炎になったとき

 

石灰沈着性腱板炎は一定期間を過ぎるとほとんどの場合痛みは治まりますので、特に激痛の急性期は注射で痛みを抑えることがおすすめです。

また亜急性の場合や慢性の場合などで、硬く、膨らんだ石灰が原因となり強い痛みや肩の動きに支障が大きく出る場合などは、手術で石灰を摘出することもあります。

注射や手術は必要でないが、石灰が原因と考えられる痛みのある状態の過ごし方としては痛みに逆らって動かさないことや、三角巾で腕を吊るなど、痛みの出ない位置に腕を置いて過ごすことが正しい過ごし方です。

四十肩や五十肩と間違い動かしてしまい、悪化させたのちに相談に来られることもよくあります。それはネットなどで四十肩や五十肩を調べるとアイロン体操や肩を動かす体操がそれらに良いとして紹介されているからですが、四十肩、五十肩であったとしても初期の段階ではあえて動かす必要なないと考えます。

よって肩が痛み始めた時には、どちらにしても無理には動かさずによく診てくれる病院や治療院に行って頂きたいと思います。

 

石灰沈着性腱板炎は痛みがとれたら、肩の機能が落ちていないかをチェックして必要であれば温熱療法や運動療法(拘縮の改善や筋力強化)を行った方がいいです。

 

石灰沈着性腱板炎は我慢してもあまり意味がありません。石灰沈着性腱板炎を疑った場合は早めに医療機関や当院にご相談ください。

 

大阪市住吉区長居西3-1-33

藤田鍼灸整骨院

06-6698-4568

 

参考文献

池田 均・宇田 宙照・福島 充也・塚西 茂昭・信原 克哉(1989)『石灰沈着性腱板炎における肩関節機能障害』肩関節 第13巻2号,205-209

朝倉 透・松浦 恒明・進 訓央・大江 健次郎(2011)『石灰沈着性腱板炎における沈着部位の検討』整形外科と災害外科 第60巻2号,298-302

浜田純一郎(2007)『石灰性腱炎(石灰沈着性関節周囲炎)偽痛風』最新整形外科学大系 第13巻,10章変性疾患,349-353.中山書店

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