2024/06/07

大阪市住吉区長居西 藤田鍼灸整骨院

仙腸関節障害：腰の痛み、臀部（おしり）の痛み、そけい部の痛み、下肢の痛みなど

 

仙腸関節について

 

仙腸関節（せんちょうかんせつ）とは

 

仙腸関節は腰の下に位置する仙骨と、その両側にある腸骨により作られる関節です。

仙腸関節は骨と骨をつなぎとめるバンドの役割をする骨間靭帯などにより強力に結合され、それをさらなる靭帯で補強されています。

よって仙腸関節はわずかに動くが非常に強く、ズレなどが起こりにくい安定した関節となっています。

 

仙腸関節の神経

 

仙腸関節は安定した関節ですから比較的痛みが出にくい関節ではありますが、関節を包む袋である関節包や関節後方の靭帯である場所に神経の終末枝が分布するために痛みの発生源となる可能性はあります。

（仙腸関節の前方は第4第5腰神経と第1仙骨神経前枝からの直接枝に支配されています。また、下方は上殿神経と第2仙骨神経枝の後枝、後方は第5腰神経と第1第2仙骨神経の後枝が支配しています）

 

 

仙腸関節の加齢的変化

 

仙腸関節は動きの少ない関節ですが加齢に伴う退行性変化は起こります。

年齢とともに関節面には凹凸が生じ、関節軟骨は線維化が進み、関節包や滑膜は肥厚し線維性になります。

その仙腸関節の退行性変化は40～50歳から変化が目立つようになり、70歳になると関節内の線維性の癒着が増大し骨棘形成が進むため、僅かな動ける範囲がさらに減少します。

 

仙腸関節の安定性

 

仙腸関節は、上半身の脊柱にかかる負荷を下肢に伝達するために強固に安定しています。

仙骨は橋のの要石のように2つの腸骨の間に適応した形で骨性に組み合わさり挟み込まれているため、荷重が加わっても尾側に落ち込まないようになっています。

 

その強固な組み合わせで出来た関節を、さらに強靭な靭帯で補強している関節が仙腸関節であり、仙腸関節は上から下に向かっての荷重がかかると仙骨が前下方に回旋しようとするのですが、それも楔形の形状により防がれるようになっています。

また仙腸関節は、歩行などの下肢の動きに応じて前に曲げる力や後ろに反ろうとする力、回旋などの力にさらされます。

そのために仙腸関節は3～5㎜程度の小さな動きと多くの靭帯により負荷を吸収し、関節を補強することで大きな応力を緩和し安定性と可動性を確保できるようになっています。

 

仙腸関節障害について

 

仙腸関節障害とは

 

関節の痛みは関節の面にまっすぐ垂直に圧を加えても痛みは出にくいものです。

膝でしたら関節の動きの少ない歩行や立っているだけよりも体重をかけて大きく動かす立ち上がりや階段に痛みは出やすく、腰なら立ったり座ったりしているだけよりも前屈や後屈、立ち上がりなどに痛みを感じます。

上半身の重さは首、背中、腰の脊椎と仙骨が１本の中心軸として支える形になっており、座位や立位での上半身の荷重は１番下の仙骨部分が最も多く受けることになります。

そして、その受け止めた荷重は仙腸関節で２つに分けられて両足に引き継がれます。

仙腸関節は上部の荷重を垂直に受け止める関節ではありませんから、もし仙腸関節に緩みや動きが大きくなってしまうようなことがあると、立ち上がりや歩行により大きな力で関節を擦り痛めるようなことが毎回起こり、強い痛みが出たり日常生活に支障をきたしたりすことになりかねません。

しかし、本来なら座位や立位時にかかる仙骨の下に落ちようとする力は、仙骨を腸骨で挟み、組み合わさる形と靭帯のつなぎとめる力で強力に保持しているのです。

そうしてしっかりと強固につなぎ留められている仙腸関節ですが以下の理由などにより痛んでしまうこともあります。

 

交通事故や高い所から落ちておしりや仙骨部を強打した時などによる大きな外力

中腰での作業など負担の大きい動作や、繰り返しの作業により骨盤周囲の筋肉の協調運動の破綻が生じた場合

股関節の臼蓋形成不全や大きなけがにより足の長さが違う状態で長年歩行した結果

長年の経年劣化

細菌感染など

 

仙腸関節障害になると

 

仙腸関節障害の主な症状は腰痛や臀部痛、そけい部痛または下肢痛です。

それはぎっくり腰のように急激に痛みが出ることもあれば、長期間慢性的に痛みが続くこともあり、下肢痛が出るために坐骨神経痛と間違われることもよくあります。

坐骨神経痛についてはこちら＞＞坐骨神経痛―おしりや太もも、ふくらはぎ、足趾の痛みやしびれ

また、痛みが無くても腰やお尻のこりや違和感、あるいは動きの悪さなどを感じることもあるようです。

人により異なりますが、前かがみや後ろに反ったとき、あるいは腰を捻るなどの動きの時に痛みが強くなることが多いと思います。

 

仙腸関節障害が疑われるときは

 

痛みを感じる部位を自ら人差し指でさして示してもらうワンフィンガーテストや、仙腸関節への疼痛誘発テスト（Gaenslenテスト・Newtonテスト・Patrickテスト）を行います。

テストの結果、仙腸関節由来の痛みが疑われればブロック注射を痛みのある仙腸関節の部位に注入し、痛みが緩和されるかどうかを確認することにより判断を深めます

 

• Gaenslenテスト

患側さんにベッドの端に仰向けに寝ていただき、症状のない側の膝を曲げて胸に抱え、症状のある方の足をベッドの端から外側に出し垂らすようにして、骨盤を反らす力がかかる様にします。

それにより仙腸関節に疼痛が生じれば陽性とします。

 

• Newtonテスト

患者さんにうつ伏せで寝ていただき、患者さんの仙骨部を手掌で強く圧迫することで仙腸関節に疼痛が生じれば陽性とします。

 

• Patrickテスト

患者さんに仰向けで寝てもらい、症状がある側の膝を曲げ反対側の膝あたりに足部を乗せて膝を外側に倒し、腸骨と倒した膝を圧迫することで股関節を開くようにした際に、仙腸関節に疼痛が生じれば陽性とします。

 

仙腸関節障害を回復させるには

 

安静を基本として骨盤ベルトでの固定、腰部や臀部の筋肉への施術などを行います。

また、強い症状で日常生活に支障をきたす場合には、仙腸関節の微小な動きを止める手術（仙腸関節固定術）が行われることがあります。

 

【仙腸関節のズレについて】

 

もし仙腸関節がずれていると判断された場合、ずれるということは仙骨と腸骨を繋ぎとめている靭帯が伸びるか切れているということになります。

よって、ずれていると判定された場合は、痛めてから数日であれば強固な固定をしっかりと行うことである程度の回復は見込めると思われます。

しかし、2～3か月以上経過したものでしたら、ずれた仙腸関節が元の位置に戻り安定することはありません。

伸びたり切れたりした靭帯が、そこから元のつなぎ留めれらる状態には回復しないからです。

ずれという言葉の捉え方は、医療機関や治療院によっては全く違う意味で使っていると思いますので、しっかりと質問をして自分の体が本当はどのような状態になっているのかを確認することが大切です。

 

腰の痛みが回復しない時や今までとは違う感じの痛みを腰周りに感じる方、なぜ痛むのかの理由が見つからない方はぜひ当院へご相談ください。

http://shinkyuuseikotsu.com/

大阪市住吉区長居西3-1-33

藤田鍼灸整骨院

06-6698-4568

 

参考文献

 

村上 栄一(2007)『仙腸関節由来の腰痛』日本腰痛学会雑誌 13巻1号　40-47

 

森本 大二郎・井須 豊彦・金 景成・菅原 淳・濱内 祝嗣・下田 祐介・笹森 徹・松本 亮司・磯部 正則(2010)『仙腸関節障害の治療経験』脊髄外科 24巻1号　6-11

 

矢吹 省司（2007）『仙椎・仙腸関節』最新整形外科学大系．中山書店